外国人客はもちろん、日本人の多くがせめて余暇くらいは楽しみたい! と国内人気観光地に殺到している。もちろん、その多くが安全に旅を満喫して家路につくのだが、一方で不注意や無知、あるいは無謀な行動で命の危険にさらされる人もいるのだ。誰もが知る観光名所を例に、そのリスクを検証しよう。
楽しい思い出が一転、仲間も巻き込んだトラウマ的事故になる…そんな出来事が先だって、しかも「日本三景」と呼ばれる「天橋立」で起こった。
2月15日午後2時過ぎ、天橋立の「股のぞき(股の間から天橋立をのぞくことで、天地逆転の光景が見られる)」用として、前面に柵がない展望台を利用していた男性を、友人男性が悪ふざけなのか押したことで、直下にある落下防止のためのフェンスも飛び越え15メートル下まで転落。胸を強打するケガを負ってしまったのだ。
関係者によれば、落下防止柵を越えてまで転落した事故は初めてだそうだが、一歩間違えば命にもかかわる事故になりかねない。ヘタをすれば、押した友人は過失致死罪に問われることもありえた。そもそも、同所には「手すりにつかまってください」という注意書きもあるのだから、安全に楽しみたいものだ。
これらのポイントはむろん、天橋立だけではない。ポルトガルからインド、東南アジアを経由して中国まで…ユーラシア大陸を徒歩で旅し、各地で講演などもこなす著名バックパッカー「あるきすと」こと平田裕氏が言う。
「新潟県の糸魚川市(現県立自然公園内)に『親不知・子不知』という古来より有名な海岸沿いの名所があります。国道8号線の他、旧北陸道を利用した観光用遊歩道があるのですが、高所で海岸と直角になるような場所もあり、特に8号線・親不知あたりはまさに断崖絶壁で、精神的に不安定な人はもちろん、悪ふざけなどとてもできる場所じゃありません。これまでユーラシア大陸の多くの海岸線を歩いてきましたが、ここまで恐怖を煽られたのは初めてです」
高所恐怖症の人には論外だろうが、名所と言われるだけあってその迫力や夕陽の美しさは絶景そのもの。反面、事故と隣り合わせで細心の注意力が要求されるが、同様な断崖や海沿いの名所は他にも数多くある。福井県の「東尋坊」などはその代表格だ。約1キロにわたる巨大な柱状節理と呼ばれる断崖はその希少価値、荘厳さや迫力で知られる一大名所だが、過去には人の命が失われたこともあり、今も注意喚起がなされている。遊覧船からの眺めも素晴らしいので、そちらで楽しむのも1つの手だろう。
南国沖縄、夕陽の名所「残波岬」も崖の縁まで行くことが可能。しかし、その先は完全に自己責任。間違っても自撮りなどに気をとられないよう。
もう1つ、北の世界遺産「知床岬」も挙げておきたい。トレッキングなどを楽しむ人も多いが、観光の制限はされており、海岸線が多いため満潮時などは特に要注意である。
(つづく)