先月29日の停戦協議を経てもなお続く、ロシア軍によるウクライナ侵攻。一方、予想をはるか上回る大打撃に士気の低下が伝えられるロシア軍内部では、プーチン大統領の側近をはじめ、重要幹部の離脱や更迭といった“異変”が相次いで報じられている。
「先月18日、アルカジー・ドボルコビッチ元副首相が、政府系財団トップを辞任したことを皮切りに、数日後には、エリツィン政権時代に第1副首相などを務めたアナトリー・チュバイス氏も、大統領特別代表を辞任。同氏はプーチン氏の腹心的存在でしたが、すでに独自のルートを使って出国したと伝えられています。さらに、ロシア軍の2トップの一人とされるワレリー・ゲラシモフ軍参謀総長の姿も見えませんし、先月11日から動静が伝えらなかったセルゲイ・ショイグ国防相については、2週間後の24日、オンラインでの安全保障会議出席の映像が公開されたものの、画面の乱れや音声がなかったこともあり、過去映像の使い回しではないか、との疑惑が持たれています」(軍事ジャーナリスト)
ショイグ氏は、プーチン大統領が最も信頼する部下の一人として知られ、非常事態相、モスクワ州知事を歴任。だが、今回の侵略において、ウクライナ軍側に通信傍受を許したとして、プーチン氏の逆鱗に触れたとも伝えられていた。
「軍の指揮をとる将校が相次いで死亡していることで、軍事作戦がうまくいかず戦争が長期化。多くのロシア兵の士気が低下しつつある中、プーチン氏は、その要因を作ったのが国防相などの采配の失敗にあると考えています。ただ、自らの手で長年の腹心すら排除し始めたとなると、さらなる暴走の危険が高まったことだけは間違いないでしょうね」(同)
そんなプーチン大統領の最後の切り札となるのが、“レニングラード3人組”の存在だという。
「3人とは、安全保障会議書記のニコライ・パトルシェフ氏、連邦保安局長官のアレクサンドル・ボルトニコフ氏、対外情報局長官のセルゲイ・ナルイシキン氏のことで、彼らは皆、サンクトペテルブルクがレニングラードと呼ばれていた頃のKGB時代からプーチン氏に忠誠を誓ってきた人物。特に、安全保障会議書記のパトルシェフ氏は『プーチンの盟友』と呼べる存在で、冷戦終結後もKGB後継組織に籍を置き、プーチン氏の引き立てによりFSB(連邦保安庁)副長官を経て、プーチンの次のFSB長官に就任した超タカ派として知られています。他のふたりもKGB時代からの腹心で、プーチン氏が独裁者として君臨する過程では欠かせない役割を担ってきた人物ですが、結局、血も涙もない独裁者を最後まで支えたのは90年代ロシア暗黒時代の『同志』だったということが、プーチン氏の歴史を物語っているようです」(同)
今後はさらに“レニングラード3人組”の動向が気になるところだ。
(灯倫太郎)