よしもと芸人で最近目立つのは二刀流。本業と副業ではなく、芸人の顔ともうひとつの“なりきりキャラ”を併せもつパターンだ。そのトップを走るのは友近。
ピン芸人としてライブやネタ番組に出演する一方で、女優として連ドラ、映画にも出る。そして「芸歴50年の演歌歌手・水谷千重子」という別人格を作り上げ、こちらも大きなビジネスになっている。
「水谷は今年2月から3月にかけて、明治座初座長公演を主宰、全公演のチケットを完売させました。その“お芝居ステージ”『とんち尼将軍一休ねえさん』には、俳優の田山涼成や高橋ひとみ、原田龍二、YOUなどのビッグネームがズラリ。2部の“歌のステージ”では千重子ファミリーがそろい、観客も彼女の器用すぎる芸風、歌唱力に大満足だったといいます」(芸能ライター)
幼少期から歌が大好きで、コンテストやのど自慢大会に出場しては、大人たちを驚かせてきた友近。かつての交際相手で、先輩でもあったなだぎ武と演じたアメリカンボーイ&ガールのネタ「ディラン&キャサリン」は好評を博したが、あくまでコントキャラに過ぎなかった。それが、“水谷”の場合はバラエティ出演、CDリリース、コンサート開催などの段階を踏むうちに、ついに明治座座長にまで上りつめた。
千重子ファミリーの絢爛豪華さも、人気を後押しした。水谷と公私ともに親しい(という設定の)「春澪」は雨上がり決死隊・宮迫博之、「八公太郎」はバッファロー吾郎A、「六条たかや」はチュートリアル・徳井義実、「倉たけし」はロバート・秋山竜次がキャラを演じる。全員がよしもと芸人で、人気ドラマや映画への出演経験が豊富な技巧派がそろう。
そのロバート・秋山も、なりきりキャラでおなじみだ。
「フリーペーパー『honto+』の連載から誕生した『ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』がメガヒットとなりました。パーソナルヒップトレーナー、ダンスパフォーマー、スローフードアドバイザー、天才子役、パリコレモデルほか、秋山がこれまでになりきったクリエイターは50名超え。その誰もが本当にいそうな強烈キャラで、これまでに個展開催、CM出演、フォトマガジン刊行などを実現させています。17年にはついに、秋山がさまざまな役を演じる連ドラ『黒い十人の秋山』(テレビ東京系)が放映されました」(前出・芸能ライター)
もはやロバートとしての稼ぎよりも、なりきりキャラで稼いだギャラの方が上回っていそうだ。
友近、秋山はともに憑依型芸人。しかも即興レベルではなく、作り込んだ芸で1本の作品にまで仕上げることができる。この才能こそ、令和の時代を生き抜くミソかもしれない。
(北村ともこ)