3月30日の広島戦も逆転負けで、矢野阪神は球団ワーストタイの開幕5連敗。1995年以来となるが、同年のペナントレースの順位は最下位。勝率がセ・リーグ首位打者のパウエルの打率よりも低いという屈辱のシーズンだった。
そんな悪夢を繰り返してはならないと、矢野燿大監督はケラーの「守護神剥奪」を早々に明言した。
「試合後、矢野監督は『湯浅で行く』と語り、新守護神候補として名前の挙がっていた岩崎優の配置換えを否定していました。セットアッパーのままのほうが岩崎の長所を出せるという言い方でした」(スポーツ紙記者)
湯浅はオープン戦で好投し、関西キー局の阪神情報の番組内でも「こんなに凄いボールを投げるピッチャーがいたんだ!?」と、プロ野球解説者たちが一目を置いていた。
プロ4年目、期待の若手といったところだが、新守護神への抜擢に否定的な意見もないわけではない。
「湯浅の昨年までの一軍通算出場数は3試合。故障が多く、シーズンを乗り切るだけの体力があるのかどうか」(球界関係者)
しかし、今年は春季キャンプから一軍スタートとなった。矢野監督が強く推したという。
「将来の守護神候補と言っていました。でも、こんなに早くクローザーを任せるとは矢野監督も想定外だったのでは」(同)
矢野監督はキャンプ前日の全体ミーティングで「今年で辞める」宣言をしている。不退転の決意と好意的に捉える声もあったが、「キャンプ前に公言することではない」と否定的な意見のほうが多かった。一度口にしてしまったものは取り消せないが、今回の湯浅の抜擢について、こんな捉え方もできる。矢野監督は「次の指揮官に繋ごう」としているのではないだろうか。
「開幕戦で救援に失敗した齋藤友貴哉にもリベンジの機会を与えました。第3戦には3者連続三振に斬って落としました」(前出・スポーツ紙記者)
また、佐藤輝明も4番で使い続けている。開幕戦で勝利投手にはなれなかったが、藤浪晋太郎の復活に太鼓判を押す関係者も多い。これも、本人の思う通りの調整をさせ、ガマンしながら使い続けた結果とも言えなくはない。
もっとも、例の今限り宣言だが、「退任を表明したら、指揮官は求心力を失ってしまう。チームが連敗街道に陥ったら、再建は困難」との懸念も、開幕前から囁かれていた。期待の若手をレベルアップさせたいとする姿勢は立派だが、今季の優勝を諦めるのはまだ早い。連敗脱出、チーム浮上は矢野監督自身が乗り越えなければならない試練である。
(スポーツライター・飯山満)