これまでは、たまに「オレオレ詐欺」のような特殊犯罪で犯人側の連絡ツールとして報じられる程度。ところが最近、ウルライナ情勢を伝えるニュースの中で、「テレグラム」というSNSアプリの名前を度々耳にするようになった。
「ロシアでは国内の情報統制のため、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどの西側発祥のSNSは軒並みブロックされています。そのためロシアでは、有名人らが一斉にテレグラムへアカウントを移しており、日本から贈られた秋田犬をかわいがっていることで有名な、平昌五輪フィギュアスケート金メダリストのアリーナ・ザギトワもインスタからテレグラムに乗り換え、『マサルさんおはようございます』と日本語でアップしたと3月22日に伝えられています」(週刊誌記者)
そのテレグラムは、2013年にロシア人技術者の兄弟によって開発されたSNSアプリ。メッセージは暗号化されるため秘密が守られ、一定の時間が経つと消える機能もあるので、さらに匿名性が高い。日本でも特殊詐欺などで悪用される理由はそこにある。AndroidやiOSなど主だったプラットフォームには全て対応しているので汎用性も高い。
そこで情報戦で遥かにロシアの上を行くウクライナもテレグラム利用に目を付けた。ロシアが侵攻を開始する直前の2月24日の未明には、ゼレンスキー大統領がロシア人に向けてロシア語で11分間の演説を行った。
「テレグラムの本社はイギリスのロンドン、オペレーションセンターはUAEのドバイにありますが、同社では戦争中にもウクライナとロシア間のやり取りを遮断しないとしています。なのでウクライナは、ロシア軍の捕虜情報を載せたり、ウクライナ国内でのロシア軍の動きや国内のライフラインに関する情報を共有するなど、フルに活用しています。ロシアの通信会社が行った調査では、ロシア国内の2月前半のテレグラムのシェアは48%だったものが、3月前半には63%に上昇したとの数字もあります」(同)
戦力ではロシアが圧倒的に有利だが、実際の戦況では物量に比例していないのが現状だ。現代の戦争はSNSの活用が戦局を大きく変えるようだ。
(猫間滋)