NHKが3月14日に伝えた世論調査によると、岸田内閣の「支持」は53%で、「不支持」の25%の2倍と、まあまあ世間からは支持を集めているようだ。ただ質問項目はウクライナ問題とコロナ対策に偏ったもので、全般的なものとは言えない。“目の前の敵”によって内政が不問に付されているとも言える。
特に、岸田内閣の目玉である「新しい資本主義」はマーケットにおいてはかなり不評で、事あるごとに生じる株価下落には「岸田ショック」、それで損をした人のことを「岸り人」と呼ぶといった現象が起きている。
「2015年から毎年90社前後の新規上場(IPO)があって、21年には125と大きく伸びていましたが、岸田政権になってから一転して動きが止まってしまいました。今年は2月半ばの段階で、昨年の5件だった上場見送りに迫る4件もの見送りがありました。そしてロシアによるウクライナ侵攻が勃発すると6社が上場を見送り、たった四半期でもう昨年を上回ってしまったのです」(経済ジャーナリスト)
もちろん最後はウクライナ侵攻がダメを押したわけだが、それ以前の理由としては「岸田ショック」なるものが上げられる。
2月21日の衆院予算委員会で、国民民主の前原誠司氏がこの問題を取り上げた。岸田内閣が誕生してからそれまでの間、金融所得課税に企業の自社株買い規制、四半期決算の見直し、IPOの公開価格設定の見直しなど、「新しい資本主義」の中身が語られるたびに株価が下落した経緯を株価チャートと照らし合わせて迫った。つまり「首相が何か言えば株価が下がる」、株価が下がれば、岸田首相が掲げる「分配」にカネが回らなくなる、というわけだ。
そこに今度はロシアがウクライナに侵攻し、環境はさらに悪化した。今年前半の大型上場だった住信SBI証券も3月24日に予定していた株式新規上場を延期。その他の企業でも社債の発行を見送る動きが続く。そうなると企業が必要とする資金調達に支障が生じ、投資の減退を招く。
「ただ問題は、ウクライナ侵攻以前に、マーケットが岸田戦略を嫌っているということ。21年9月に菅首相が退陣するまでは、IPOの初値はことごとく公開価格を上回ったものですが、岸田政権になってからは株式市場の不調が波及して70%ほどにまで落ち込んでいます。株で儲けた人=悪者のようなイメージを作り上げてしまったので、投資家が皆がすくんでしまったような状態が続いているのです」(同)
そのため、株価の月間下落率は歴代首相でワースト3位という不名誉。ことに新興市場の下落がヒドく、巷ではかつて仮想通貨で巨万の富を築いた人を「億り人」と呼んだのをもじって、岸田政権下で投資で失敗した人を「岸り人」などとも呼ぶ。
投資をしていなくても、コロナで失業した人や所得が減った人も含めて「岸り人」と呼ぶケースがあるようで、世情が不安定な中、今後は様々な「岸り人」が続々と登場しそうだ。
(猫間滋)