マルチクリエイターとしても成功を収めたお笑いタレントといえば、キングコングの西野亮廣。昨年はオリジナル絵本「えんとつ町のプペル」が映画化され、興行収入27億円の大ヒット。脚本・演出を務めたミュージカルも上演された。2月28日には日本武道館でキングコングのトークライブを開催、オンラインサロンの会員は4万人をキープするなど、インフルエンサーとしても高い人気を誇っている。
西野がお笑い活動を控えはじめたのは、20年近く前。そのころ、誰よりも早く「クリエイター西野」の才能に“ベット”した先輩芸人がいた。博多大吉だ。今でこそ好感度芸人の筆頭格である大吉だが、まだ関東のテレビにさほど出ていないころ、住んでいるマンションが西野と近かった。西野は、「Dr.インクの星空キネマ」「Zip&Candy~ロボットたちのクリスマス~」「オルゴールワールド」という3冊の絵本を出版。米国ニューヨークで原画展を開きたいという野望を抱き、クラウドファンディングを使って出資者を募った。
「当時は、今ほどクラファンがポピュラーではありませんでした。西野さんは、芸能人で初めてこれにトライ。出資額によってリターンが変わるシステムで、下は500円から上は30万円まで設定。最高額の出資者には、細密ペンで似顔絵を書き下ろすという公約を掲げ、ノッたのが大吉さんだったのです」(エンタメ誌ライター)
西野がその目標を口にした宴席には、大吉と天津の向清太朗がいた。感銘を受けた大吉は、西野がトイレで席を立ったタイミングを見計らって店を出て、ATMに走って出金。戻ってきた西野に、「30万円のは俺が買うから、お前はニューヨークに行ってこい」と封筒を手渡したという。
「大吉がスゴいのは、そのころ2人はさほど親しくなかったこと。当然、西野は先輩の優しさを辞退しましたが、大吉は『西野くんの絵を30万円で買えるのは今しかない。これは僕にとってプラスだから、買わせてください』と強引に受け取らせたといいます」(前出・エンタメ誌ライター)
13年、芸能人初のクラファンは大きな話題になり、585人の支援者が賛同。総額531万1000円に達して、アメリカで初の個展を開催した。以降4回もプロジェクトを起案しており、16年に募った「個展『えんとつ町のプペル展』を入場無料で開催したい!」は6257人の支援者で、4637万3152円も集めている。
「ディズニーがライバル」を公言しつづけた西野。凄いのはポリシーを貫いた西野だけでなく、キャッシュで払った太っ腹な大吉もだろう。
(北村ともこ)