巨人の高卒2年目の秋広が順調にすくすくと成長している。米を朝2合、昼2合、夜5合食べて、体重は95キロから100キロに増量したという。身長2メートルで、腕も足も長いから細く見えてしまいがちやけど、去年と比べると確かにガッシリしてきた。ただし、今年からレギュラーを奪えるかと言われれば、もう一皮むけなアカン。それでもスケールの大きさは誰もが認めるところ。
キャンプ中継で練習の様子を見ていても、必死に1軍に食らいついていこうとする姿勢があった。2月17日のロッテとの練習試合(那覇)では4打数4安打とアピール。結果だけでなく、内容も悪くなかった。スイングは下半身の使い方など改善の余地はあるが、内角高めのさばき方にセンスのよさを感じた。長距離砲がプロで生きていくには、インハイ攻めを克服できるかどうか。芯で打ち返さなくても、ファウルで逃げられるだけでいい。秋広は日本人離れした長さの腕をたたんで、バットに当てる器用さを兼ね備えているのがいい。
プロ野球選手は体重によって、スピード、パワーが変わってくる。バランスよく鍛えて、自分のプレースタイルに合った体を目指せばいい。
僕の現役時代は、太りたくても太らない体質やった。普段は68キロで、106盗塁をマークした4年目のシーズン終盤なんかは2、3キロ落ちていた。頬肉も取れてゲッソリやったから、周りからは「そんなに疲れた様子で大丈夫か」と心配された。でも、自分では疲労も感じていないし、逆に体が軽くなったようによく動けていた。だからスピードだけを求めるなら、体重は増やす必要はない。
ホームラン打者でもないのに、体重を増やして飛距離を出そうと試みたこともあった。その時にアドバイスをくれたのが「酒仙投手」と称された今井雄太郎。
「日本酒を飲む習慣をつけると太りますよ」
僕は酒が弱いけど、言われた通りに頑張って日本酒を飲んだ。それでも2キロほどしか太らず、シーズン中はいつの間にか68キロに戻っていた。
西武のおかわり君こと、中村のようにコロコロした体形でも、それで動けるなら構わない。その点で心配なのが日本ハムの清宮。新庄監督にデブじゃないかと言われて、10キロ近く減量してキャンプインした。昨年は1軍出場がなく、同学年のヤクルト・村上に随分と差をつけられた。本人の中で焦りはあったと思う。ランニング量を増やすなどで徐々に減らしたならいいけど、食べる量を落としての単なるダイエットなら、逆効果になる可能性がある。清宮に求められているのはホームランなんやから。
自主トレで弟子入りしたソフトバンク・柳田からは「うまいもん食べて、いっぱい運動して、というのがいちばん元気でいい動きができる」とアドバイスされたという。ほんまにその通り。今は各球団とも栄養士の指導を受けて、バランスのいい食事をしてるけど、僕に言わせれば、そこまで神経質になる必要はない。現役時代は肉ばっかりの偏った食生活やったけど、ケガはしなかった。食べたいものを食べて、故障しないように足腰をしっかり鍛えるのが一番やと思う。体重が増えようが減ろうが、結果がすべての世界で「正解の体形」はない。動けて故障しないデブなら、それは最強かもしれんのやから。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。