「西九州新幹線」9月23日開業!50年越しの悲願成就も横たわる“佐賀県問題”

 JR九州は2月22日、九州新幹線の長崎ルートを9月23日に開業すると発表した。列車名は「かもめ」。小倉‐長崎間をつなぐ特急列車として1976年から運行してきた名称をそのまま引き継いだ。そもそもこの路線は50年前、田中角栄首相が唱えた「日本列島改造論」に基づいた「全国新幹線整備法」で博多と長崎をつなぐ新幹線として「整備計画」が決定されたもの。今回の開通は半世紀を経て“地元の悲願”達成となるはずで、JR九州や地元関係者はさぞかし歓迎…となるはずなのだが、どうも様子は若干異なる。

 むしろ関係者の間では頭の痛い問題がチラついて仕方ないといったところのようだ。というのも、今回の開業はあくまで佐賀県の一部と長崎をつなぐ「長崎ルート」の開業であって、佐賀県の大半はまだ未開通だからだ。そこには、永らく開通に反対をしてきた「佐賀県問題」が横たわったままなのだ。

「九州新幹線は博多で山陽新幹線と結んで本州とつながり、さらには南北に鹿児島中央まで伸びて289キロにも及びます。一方、今回の西九州新幹線は佐賀県の西端の武雄温泉と長崎をつなぐ66キロしかありません。博多と長崎、はては本州と長崎を新幹線が開通するには、佐賀駅を通るルート、佐賀市北部を通るルート、佐賀空港を経由するルートのいずれかを開通させる必要があって、現在、佐賀県と国が話し合っていますが、佐賀県の反発にあって先に進まない状態にあります」(経済ジャーナリスト)

 だから今回の開通では、博多‐長崎間は30分短縮されて所要時間は1時間20分になると喧伝されているが、それは武雄温泉で在来線特急の「リレーかもめ」に対面のホームで乗り換えて…というおかしな形を取った上でのものとなる。つまり、佐賀県の大半は新幹線が走らないという状況に変わりはないのだ。

 国と佐賀県は20年6月から話し合いの場を持ち続け、粘り強い交渉を進めているが、2月10日に行われた6回目の話し合いでも具体的な成果はほぼ皆無だった。だから今回の“部分開通”はこれを受けてのものという側面もある。

「対立の理由は、国が求める新幹線の規格と事業費負担の問題です。詳述を避ければ、国は単に関西と長崎を結びたがっていて、その場合は佐賀県は県民に在来線と新幹線の乗り換え負担に加え、高い事業費の負担も強いることになる。つまり、佐賀県にはデメリットが多い割にはメリットが少ないないわけです。地元にとっては死活問題ですからね。国の柔軟な対応が求められてしかるべきと思われます」(同)

 半世紀前の“計画”が今にも“遺恨”を残しているとは、何ともいわく言い難いものだ。

(猫間滋)

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