ファンは複雑な心境なのではないだろうか。
阪神・藤浪晋太郎が巨人のエース・菅野智之の自主トレに参加しているのは既報通り。矢野燿大監督は関西メディアにマイクを向けられる度に「復活を信じている」と語ってきたが、本心から出た言葉なのだろうか。本当に復活したら、それは「菅野のおかげ」ということになる。当然、矢野監督を含め、コーチスタッフ、フロントも「今まで何をやってたんだ?」と非難されるかもしれず、それは面白くないだろう。
「これも、侍ジャパンの影響でしょう。他球団の主力選手といっしょに練習することに、今の選手は全く抵抗がありません。好意的に捉えれば、フェアプレー精神ですが」(在阪記者)
とはいえ、今年の阪神は他球団選手との合同自主トレが目立つ。期待の若手・井上広大も巨人・岡本和真と合流し、新主将・坂本誠志郎も、オリックスに移籍した能見篤史と練習をともにしている。坂本と能見の合同自主トレは2年連続となるが、今回は今季2年目を迎える伊藤将司も合流した。批判的な声もないわけではない。
「ひと昔前なら、考えられないことでした。『対戦するチームの主力選手と仲良くなってどうするんだ?』と…」(球界関係者)
他球団の選手と仲良くする傾向を快く思わない関係者によれば、「野球以外の話も交わされている」という。それが「イヤ!」なのだそうだ。
「某球団の本拠地球場にはサプリメント・バーがあるとか、あのチームのトレーニングマシンは新しいなんて言い出したり。あの球場にはソフトクリーム機があって羨ましいとか言って、球場設備を比べられたりするんです」(同前)
本拠地球場の設備を比べるだけなら、まだ良いだろう。契約更改時のやり取りが他球団選手に漏れ出たら大ごとだ。今のところ、その点は選手のモラルによって守れているが、藤浪が菅野の自主トレに合流した直後だった。ジャイアンツは球団広報がカメラをまわし、選手の素顔を紹介するユーチューブ・チャンネルがある。それに藤浪が“客演”していた。偶然に映り込んだのではなく、しっかりとカメラ目線で、名前も紹介されていた。中川皓太ら他の巨人投手ともすっかり溶け込んでいる様子だった。
「藤浪はかつて前田健太やダルビッシュにも学んでいます。そういう経験もあるからか、質問上手です。他球団選手も本来の力は認めていますのでなんとかしてやりたいと思っているのでは」(前出・在阪記者)
菅野、藤浪ともに得意な変化球はスライダーだ。2人は気が合うのだろう。でも、ペナントレース本番は大丈夫か?
(スポーツライター・飯山満)