松井裕樹がパドレスと5年契約、藤浪晋太郎の“失敗”が反面教師に

 クリスマス休暇直前の12月23日(現地時間)、大リーグのサンディエゴ・パドレスが前楽天の松井裕樹を獲得したことを正式に発表した。

 5年総額2800万ドル(約39億円9000万円)、3年目と4年目のシーズン後に契約を途中破棄できるオプトアウト権も付帯されたそうだが、興味深いのは米メディアの今回の契約に対する受け止め方だ。

「松井との契約は長くても3年とみられていました。予想を覆す長期契約となりましたね」(現地記者)

「長くて3年」と予想された理由はいくつかある。1球が命取りになるクローザーは、信用を失えば“短命”で終わるケースも多い。また、力投型が多く、疲労による好不調の波が大きい。連投が仕事なので、故障のリスクも抱えている。リリーフ投手と長期契約を結ぶのを敬遠する傾向があるため、米メディアは驚いたのだ。

「5年の長期契約を結ぶことができたのは、松井の代理人の手腕でしょう。担当したのは米大手代理人事務所・WMAのブライアン・ミニティ氏ですが、彼はフィリーズ、ダイヤモンドバックス、ナショナルズでゼネラルマネージャー補佐を歴任しました。球団側にいた人ですからね、どういう交渉の進め方をすれば選手に有利になるのかお見通しのはず」(米国人ライター)

 昨年度の藤浪晋太郎の入団契約が反面教師になったという。藤波は23年シーズン後半、しり上がりに調子を上げた。だが、当初は四死球が多く、マウンド投げてみなければ好不調が分からないといった有り様だった。しかし、ストライクゾーンに決まったときの直球の威力は対戦した全ての球団が認めており、

「複数年契約を結んでいれば、短所や失敗をツッコまれることもなかったのに…」

 と、米メディアは捉えていた。

 藤浪は1年契約だったため、23年オフも所属先が決まっていない。オリオールズをはじめ複数球団と交渉しているというが、球団側は23年シーズンのデータ、登板内容をチェックする。数字だけ見れば「防御率7点台、79イニングを投げて与四死球52」なんて投手は怖くて使えない。

 しかし、複数年契約であれば、球団は「どうすれば投球内容が良くなるか」を検討してくれる。メジャーリーグに挑戦した多くの日本人選手が複数年契約を望むのは、1年目に失敗した場合の保険を掛けておきたいからでもある。

「日本人の気質からしても、『腰を据えてジックリと』のほうが適しています。23年10月に28歳を迎えた松井は32歳のシーズンまでパドレスで過ごすことになります。年齢的にピークとなる時期でもあり、代理人はそのあたりもアピールしたようです」(前出・米国人ライター)

「単年契約でも」の契約はリスクが大きい。松井の代理人は良い契約をまとめてくれたようだ。

(飯山満/スポーツライター)

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