新疆ウイグル自治区はハイテク実験土地だった!テスラがショールームを開設した理由

 テスラが12月31日に中国の新疆ウイグル自治区にショールームを開設したことで、アメリカ国内で総バッシングに遭っている。それはそうだ。アメリカでは12月23日に「ウイグル強制労働防止法」という法律ができたばかり。この法律では、ウイグルで生産された製品について強制労働がなかったことを証明しない限り、アメリカへの輸入を禁止するというもの。つまりは、中国の人権問題に対する経済制裁を意味する。ショールームの開設は、その意義に冷や水を浴びせかけるようなものなのだ。だがイーロン・マスクの施策には、深謀遠慮が見え隠れする。

 新疆ウイグル自治区は中国の最北西端にあって、東はモンゴル西はカザフスタンに接し、すぐ先にはアフガニスタンが控える。ウイグル族と漢民族が半数弱を占めて、文化的にはイスラムの土地だ。そのウイグル人が綿花栽培で強制労働を強いられて問題になっているということで、どこか辺境の地のイメージを持ちがちだが現実は大きく異なる。実はハイテクな土地なのだ。

「中国国内の報道によると、新疆のデジタル経済はこの1年で10%の成長を示し、この地域のGDPの4分の1を占めるほどとされています。中国最大の国有ITグループの長城科技集団やスーパーコンピュータ大手の中科曙光の工場があり、5Gの基地局数が6000を超えて5Gユーザーは275万世帯に達するといいます。5GやAI、ビッグデータの次世代技術と実体経済を融合させた、ある種ハイテク実験土地として位置づけられているのです」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 そして、そのための電力供給地でもある。もともと風力や水力発電の資源が豊かで、そこに今度は広大な土地に夥しい数の太陽光ソーラーパネルを敷き詰めた様子が衛星写真で確認されている。ちなみに、ここは太陽光パネルに必要なシリコンの一大産地でもある。つまり、新疆が電気を基にしたスマートシティ化すればテスラにとっても好都合というわけで、この地にショールームを開設するのはむしろ驚くべきことではなく、テスラと習近平は同じ方向に向かって進んでいるということだ。

 中国はチベットでも経済的に豊かな生活というアメを与え、それに従わない僧院に在籍する僧侶を追放、寺院を中心に広がった僧房を解体して観光地化するというムチを加えた。新疆でもハイテク生活というアメと、ウイグル人への排斥というムチが問題にされているのだ。

(猫間滋)

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