またもや公共放送としてのモラルが問われる問題が発覚した。
NHK大阪放送局が9日に会見で、昨年12月26日に放送(30日再放送)したBS1スペシャル「河瀨直美が見つめた東京五輪」後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして謝罪した。
同番組は、6月に公開予定の東京五輪公式記録映画の総監督を務める河瀬直美氏(52)に密着したドキュメンタリー。番組のなかに東京五輪の反対デモに参加したという男性にインタビューするシーンがあり、『実はお金をもらって動員されていると打ち明けた』というテロップが流れた。ところが、放送後に視聴者から『この男性がデモに参加したのは本当か?』『どこから金をもらったのか?』『印象操作ではないか』等の問い合わせがあり、NHKが再確認すると、男性はデモに参加してお金を受け取る意向があると話していたものの、実際に五輪反対デモに参加していたかどうかは確認できていないことが分かったというのだ。
放送ジャーナリストがあきれた顔で語る。
「同局は会見で『担当者の確認が不十分でした』と謝罪、『番組の取材・制作はすべてNHKの責任で行っており、公式記録映画とは内容が異なります。河瀨直美さんや映画監督の島田角栄さんには責任はありません』とし、事実の捏造やヤラセについては否定しています。ただ、取材時点で『金をもらって動員された』と聞かされたら、報道機関であるなら普通は『いつ、どこから、いくら貰ったのか』といった裏付けを取るはず。しかも、NHKの放送前のオンエアチェックはひときわ厳しいですからね。そうなると、何らかの意図をもって編集されたと勘繰られても仕方がないかもしれません」
報道を受けSNS上には《間違いなくBPOで審議されるべき重大案件。NHKはすべての事実を公表すべき》《国策を批判した人間を悪者に仕立てて放送したかったのではないか。意図的に偏向報道をしたように受け取れる》《指摘されなかったら、金銭授受はあったという事実が記録として残ることになったわけだろ。怖い話だ》といった批判が殺到。さらには《国民から無差別に税金の如く徴収して、「確認が不十分」って意味不明》《今すぐ受信料強制加入を廃止して、スクランブル放送にすべき》といった声も相次いだ。
「NHKでは、2015年に『クローズアップ現代』でヤラセ疑惑が浮上。“過剰な演出”があったと認め、取材した記者や報道局長などが処分され、再発防止策として制作過程でのチェックが強化されました。その時の教訓が全く生かされていなかったことになります」(同)
なお、当の河瀨直美氏は10日、「公式映画チームが取材をした事実と異なる内容が含まれていたことが、本当に残念でなりません」がとコメントを発表したが、いまだNHKへのブーイングは収まりそうにない。今回の事態が公式映画の評価に影響しなければいいのだが。
(灯倫太郎)