寿命を縮める「夜間頻尿」撃退8カ条(3)風呂の入り方で逆効果になる

 そこで、石井医師に夜間頻尿を改善する8つの方法を伝授してもらった。

① 夕方のウォーキング

 体内を巡る血液やリンパ液は重力に逆らえないため徐々に下に落ちていき、それがむくみを起こす原因となることは先に述べた。それを防ぐには、やはりふくらはぎの「筋力ポンプ」を活発に動かすのが一番。

「ウォーキングをすると、ふくらはぎが刺激されて血流がよくなりますから、血液・リンパ液が心臓に戻りやすくなる。ただし、早朝はまだ血液やリンパ液が下肢にたまっていないので効果がない。なので、実際にするなら夕方以降が最適。下肢のむくみが取れて、余分な水分を就寝前までに腎から尿で出してくれますから、尿の量が減ることになります」

② 就寝前にふくらはぎをマッサージする

 ふくらはぎをマッサージすることで①同様、血液とリンパ液が心臓に戻りやすくなる。やり方は実に簡単で、足首から順に上に行くように、ふくらはぎをもんだりさすったりすればいい。

③ 寝る2〜3時間前に風呂に入る

 入浴すると血流がよくなり、寝る前に下肢の水分が尿となって出ていく。ただし2〜3時間前に入るのがポイント。寝る直前に入ると、睡眠のタイミングで尿が作られることになり、逆効果になるので要注意。

④ 食事の塩分を減らす

「塩分の過剰摂取は体内のナトリウムとのバランスを崩すため、余計に水分を欲するようになります。すると夜間の尿量が増えて、結果として頻尿になる。特に夕食は、塩分少なめのメニューを心がけるほうがいいでしょう」

⑤ 漢方薬を用いる

 夜間頻尿の改善には、八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などが効果的なのだという。ただし、服用には医師への相談が必要。

⑥ 昼間に「弾性ストッキング」をはく

「高齢になると下肢の筋力が衰えるため足がむくみます。これは、ふくらはぎの筋肉によるポンプ作用が衰えるためです。血管外科などで下肢静脈瘤の治療で使用される、ヒザ下まである弾性ストッキングを使用することでふくらはぎに圧がかかる。筋肉のポンプ作用が強化されて、血液が逆流しにくくなり、足のむくみや疲れを解消してくれるのです」

⑦ 寝る前に「ロキソニン」を服用する

 消炎・鎮痛剤として知られる「ロキソニン」には、

・腎臓の血流を少なくして夜の尿量を減らす

・膀胱や尿道に対する刺激を抑えて、排尿を制御する

・膀胱から脳への神経に作用して、トイレに行きたい感覚を抑える

・睡眠覚醒をコントロールするため、結果として睡眠が十分とれるようになる

 といった効果がある。

「ただし、これを飲み続けると副作用が出る場合もあるので、漢方薬同様に医師と相談のうえで服用することが大切です」

⑧ 恥ずかしがらず、尿瓶を近くに置いて寝る

 夜中に起きてトイレに行くという行為には、転倒によるケガや骨折といったリスクが伴うことは、前述したとおり。

「本当につらいなら、手の届くところに尿瓶を置いておくことをお勧めします。もちろんポータブルトイレでもかまいませんが、使用する際に立ちくらみなどのリスクはある。そう考えると、横になったままで用を足せる尿瓶のほうが体に優しいと思います」

 ちなみに「水分をとると血液が薄くサラサラになって、脳梗塞や心筋梗塞を予防できる」という説だが、石井医師によると「特に科学的根拠はない」のだという。これが本当ならば、きちんとした水分制限を心がければさらなる効果が期待できるだろう。

 たかが尿の話かもしれないが、そこには体からのさまざまなサインが隠されている。寿命を縮めないためにも侮ることなく、何か心当たりがあれば、早めの改善と治療を心がけよう!

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