寿命を縮める「夜間頻尿」撃退8カ条(2)重要なのは就寝後1回目のトイレ時間

 さっそく「夜間頻尿」「尿漏れ」治療の第一人者である、石井クリニック(埼玉県さいたま市)の石井泰憲院長(医学博士)に話を聞いてみることに(以下、コメントは全て石井医師)。

「通常、夜間頻尿というのは、夜の睡眠中に1回以上、排尿のために起きる症状のことですが、実際の臨床では2回以上を問題にして診療しています。2回以上になると不快なだけでなく、睡眠不足を招いたり体調を崩すなど、日常生活の質が落ちることになります」

 石井医師いわく、夜間頻尿で問題なのは、就寝後1回目のトイレのために何時に起きるかだという。

「例えば夜10時に寝て夜中の1時に起きてしまう人と4時に起きる人とでは、同じ1回でも睡眠の質が全然違うはず。当然、短ければ短いほど質が悪くなる。特に高齢者の場合は睡眠時間が前倒しになるため、1回目までの熟睡が大切になります」

 まず夜間頻尿には、

・夜の尿量が多いタイプ

・膀胱の容量が小さいタイプ

・眠りが浅く睡眠障害から頻尿になっているタイプ

 の3つがあり、

「最も多いのが、夜の尿量が多いタイプで、その原因となるのが足のむくみです。というのも、私たちは日中、立ち姿勢や座った姿勢で過ごしているため、どうしても重力によって血液は下のほうにたまります。夕方頃から足がむくんでくるのは、そのせいなんです」

 歩いたり運動したりすることでふくらはぎを動かせば、筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことで「筋力ポンプ」の役割を果たし、血液の戻りをよくしてくれる。

「血液の70%は下半身にあるので、ふくらはぎの筋肉ポンプはとても大切な役割を担っている。静脈には動脈のような弾力がない代わりに、逆流を防ぐ弁がついているため周囲の筋肉が収縮・弛緩を繰り返すと、自然に心臓方向への血液の戻りが促されます。ところが、年を取るとどうしても筋力が低下して静脈の弁も弱くなるため、この大切な筋肉ポンプが衰えてしまうんですね。結果、足がむくみやすくなり、夜間の尿量も増えてしまうんです」

 足のむくみと尿量の関係は密接だ。尿は血液とともに腎臓で作られている。そのため血流が悪くなり、下肢に血液が滞った状態で足がむくんだような状態になると、結果として尿が効率よく作られなくなってしまうのだ。

「その状態のまま体を横にすると、今度は足に重力の影響がなくなるため、一気に血行がよくなる。その結果、腎臓への血流が増えて尿が多く作られてしまい、夜間頻尿を引き起こしてしまうんです」

 さらに、夜間頻尿で注意しなければならないのが、前立腺肥大をはじめ、心不全、睡眠障害、糖尿病、高血圧、膀胱炎による膀胱機能の低下など、その陰に隠れている病気の存在だ。

「昔から夜間頻尿の原因とされてきたのが、前立腺肥大症。これは膀胱の容量が小さくなる疾患で、その分、敏感になった膀胱が刺激されることから夜間頻尿になると言われてきました。もしそれが本当ならば、理論上では昼間も頻尿になるはず。つまり、夜のおしっこの回数が多いということは、昼間におしっこをうまく作れていないことを意味しているのです。その理由として挙げられるのは、昼間、腎臓に血液を集められない、あるいは集めておいてもうまく尿が作られていないという、腎臓の機能に問題があるということ。そして、もう一つは心臓に問題があるケース。うっ血性心不全になると、心臓のポンプが空回りして血液が全身にうまく回っていかなくなります。夜間頻尿は、体から出された危険信号なのかもしれないのです」

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