幹事長退任の二階俊博氏に「陳情の列」が絶えぬワケ

 御年82歳にして毒舌健在だ。

「儲かりまっかと言う前にしっかりやれ!」——24日午後、都内で幹事長退任後初めてとなる講演を行い、衆院選の小選挙区で日本維新の会に全敗した大阪の自民党に対し、そう檄を飛ばした自民党・二階俊博前幹事長。

 二階氏はこの日、先の衆議院選挙で議席を増やした日本維新の会や国民民主党について、「これから重要法案の審議をしないといけない場面がしばしば出てくるが、そうした場合にきちんと連携をとれるようにしておかなければならない」と語り、返す刀で、大阪の自民党に冒頭のような苦言を呈したというが、毎日新聞によれば講演では他にも、

《8月に菅義偉前首相から幹事長の交代を告げられたことについて「(菅氏に)『辞めてもらう』とか言う資格があるか。任命権者だと思っていたら大間違いだ」と当時を振り返りつつ不快感を示し》《「(幹事長を)5年2カ月もやったら、こっちが辞めさせてもらいたい」としつつ、司会者から「菅氏と対等な関係か」と問われると、「対等でも何でもないけど、生意気言うもんじゃないよ」と不満をのぞかせた》のだという。

 とはいえ、岸田政権の誕生で完全に力を失ったとされる二階氏。それが事実なら、どうしてここまで強気でいられるのか。その理由を政治ジャーナリストはこう読む。

「岸田政権が誕生したことで、二階氏は力を失うと見られていたのは事実です。ところが10月の岸田文雄政権発足後に、幹事長時代から務めていた国土強靱化推進本部長として党務に当たることになった。結果、年末にかけて大詰めを迎える令和4年度予算編成作業を控え、二階氏のもとを訪れる自治体や業界団体が急増。永田町では陳情件数が国会議員の力を示すバロメーターとも言われ、各団体とのパイプは来夏の参院選に直結するため、改めて二階氏の影響力に注目が集まっているというわけです」

 国土強靭化計画とは、東日本大震災を受け、2013年に施行された国土強靭化基本法に基づき、大規模な災害からの被害の最小化に向けた重点施策を盛り込んだ計画のこと。

「計画は2014年に策定され、5年ごとに見直されるのですが、インフラ事業を中心に防災、減災対策の課題を洗い出し、経産省、国交省ほか、自治体が防災対策として反映するというものです。二階氏は今月18日に、高速道路整備に関する要望で地元・和歌山を訪れ、『国土交通省に急がせるように』激励したというニュースもあり、それを機に各団体の陳情が急増。以来、党本部5階に新設された同本部長室の前にはパイプ椅子が並び、連日来客が絶えないといいます。通常、党役員以外へ陳情がひっきりなしに来るのは珍しいことですから、それが、講演での強気発言となって出たのではないでしょうか」(前出のジャーナリスト)

 二階氏は同講演で、岸田総理大臣の政権運営に触れ、「国民の声を聞き、思うようにやればいい。ただ、耳で聞くだけではなく、聞いたことを実行していかなければ聞いたことにはならない」と指摘。二階氏の存在感はいや増すばかりだ。

(灯倫太郎)

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