「阿部作戦コーチ」の緊急措置に隠された”原監督続投”の布石

 巨人は阿部慎之助二軍監督を一軍の作戦コーチにコンバートした。その狙いは逆転優勝に一縷の望みをかけ、チームに活を入れるためだが、“阿部作戦コーチ”は黒星スタートとなってしまった(10月5日)。

「阿部コーチは現役時代、長くチームのまとめ役を務めてきました。選手の側からすれば、『話しやすい』という面もあったと思います。原辰徳監督も、後継者として自分の目の届くところで教えておきたいこともあったのでしょう」(スポーツ紙記者)

 監督の継承劇に重ねて見る向きも多く聞かれた。しかし、阿部コーチが一軍に合流した5日の試合前、原監督は意味シンなコメントも発していた。残り15試合となった終盤戦での突然の配置換えについて聞かれ、

「予定通り」

 と、答えている。

 本当にそうだろうか。配置換えが発表された4日の前日、巨人二軍は公式戦最終戦を迎えた。試合後、阿部二軍監督は「疲れた~」と言わんばかりに安堵の表情を浮かべていた。

 この後の一軍合流が“予定通り”なら、まだ表情を強張らせていたはずだ。原監督の逆転優勝に懸ける思いから出た人事案だと思われるが、新たな疑問も浮上してきた。

「石井琢郎野手総合コーチが三軍担当になったのは驚きでした」(球界関係者)

 阿部コーチに代わって二軍をまとめるのは、二岡智宏三軍監督。石井コーチに一軍昇格間近の二軍の若手を指導してもらうのが自然な流れだが、その下の、支配下登録を狙う予備軍担当となった。

「巨人はシーズン終盤になると、毎年、フロント幹部が全コーチと1対1の面談をするんです。そこで何かあったのでは?」(同前)

 同関係者によれば、原監督が“ダメ出し”をしたコーチはいないという。面談では現場での評価、本人の都合や要望などが確認され、次年度以降の契約に反映されるそうだ。石井コーチの三軍行きは本人も納得済みということになるが、こんな指摘も聞かれた。

「原監督が来季も指揮を執るのではないかとの見方も強まってきました。負けたまま退くとは思えません。そうなったら、阿部コーチをそのまま一軍担当とし、いろいろと教えて行くと思われます。二軍、三軍を含め、来季は大きな配置換えが行われるのでは」(同前)

 阿部コーチも試されているのかもしれない。二軍公式戦を終え、安堵の表情を浮かべたものの、二軍指揮官としての2年間の成果を見せなければならなくなった。終盤戦で行われたコーチ配置替えは、やはり“逆転優勝”のためだけではなかったようだ。

(スポーツライター・飯山満)

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