トヨタが9月10日、8月19日に公表した減産の生産計画の見直しを発表。それによると、8月時点での生産計画に更なる減産を加え、9月に約7万台、10月にはその数字を増やして約33万台の減産を行うとした。理由は「東南アジアでの新型コロナウイルスの感染拡大等による部品の供給不足」としているが、これはつまりは20年末に顕在化した世界的な半導体不足に更なる拍車がかかっていることを意味する。
「朝日新聞が9月24日付の記事で半導体不足による自動車減産が日本経済に与えるであろう影響について集計数値をはじき出していますが、それによると8月末段階で約93万台の減産だったものが9月には170万台に拡大。その損失額は1兆2000億円に達するとしています」(経済ジャーナリスト)
もちろんこれは日本だけに限った話ではなく、アメリカのコンサルティング会社が行った試算では、世界の自動車メーカーの21年の損失額は約23兆円にも上るとされている。5月段階では約12兆円と想定していたので、およそ予想の2倍に膨らんだことになる。そう、世界的な半導体不足に“第2波”が襲いかかっているのだ。
「20年の末に顕在化した半導体不足は主に台湾発のものでした。半導体の製造は大別すると前工程と後工程に分けられ、前工程は先端技術によるものなのでそれに優れた台湾や日本、韓国などで行われます。ここがストップしたのが第1波で、今度の第2波は東南アジアから発しています。後工程は人員が必要なため、人件費が安い東南アジアがその中心。特にマレーシアは後工程の主要拠点ですが、コロナの感染拡大でロックダウンが行われ、工場の操業が停止されるなど確実な悪影響となっています」(前出・ジャーナリスト)
さてそんなタイミングの中、9月24日に販売が開始されたのが「iPhone 13」シリーズ。これがなかなか手に入らない状況が続いている。あるガジェット情報サイトが調べたところでは、アップルの公式サイトで注文した場合、「iPhone 13 mini」が最速で10月7日、「iPhone 13」が10月12日、「iPhone 13 Pro/Pro Max」が10月26日と、行列待ち状態なのだという。
それなりの需要を予測して半導体が確保されているのかもしれないが、半導体不足で悩んでいるのはスマホだけでなく前出のように自動車、テレビ、タブレットやラップトップ、最新ではないが5G(第5世代移動通信)対応の「iPhone12」モデルにも及ぶ。
となればもしかしたら「13」シリーズもトヨタのように減産を強いられ、そもそもがなかなか手に入らないものがさらに先延ばしなんていう事態になるかもしれない。
(猫間滋)