未だ世界中で猛威を振るっている新型コロナ。だが、感染力は極めて強いもののWHOの統計から算出した現時点での致死率は約2%。数字だけ見れば、伝染病や感染症の中では死のリスクはとりわけ高いわけではない。
そんな中、インド南部のケララ州で9月上旬、致死率70%以上と言われる極めて危険なニパウイルスにより13歳の少年が死亡。同国保健省やWHOが警戒を強めている。
このニパウイルスは1998年にマレーシアで確認された比較的新しい人獣共通感染症のひとつ。もともとオオコウモリが宿主とされているが、そこから豚に感染し、ヒトへとさらに感染が広がっていったとされている。
「豚の場合、致死率は5%ほどですが、人間は4~14日程度の潜伏期間を経て急性脳炎を引き起こすため、命にかかわるケースが多いんです。しかも、年々ウイルスは強力になっていると言われており、致死率も当初の40%前後から現在では70%以上と大幅に高まっています」(医療ジャーナリスト)
ちなみに致死率の高さでいえば、エボラ出血熱が50~90%。これに匹敵する恐るべき感染症だが、日本でニパウイルスの感染が広がる可能性は低いという。
「オオコウモリは150種類ほどいますが、日本に生息するのは沖縄や小笠原などの南方に数種類がいるのみ。それにすべてのオオコウモリがニパウイルスを保有しているわけではなく、あくまで一部の種類です。これまでマレーシアやインドのほか、フィリピンやバングラデシュでも感染が確認されていましたが、封じ込めに成功しています」(同)
日本人にとってはあまり関係のない話のように思えるが、コウモリ自体は本州にも洞窟などに数多く生息する。ニパウイルスでなくても別の凶悪な伝染病に感染するケースはあると、前出・ジャーナリストは警告する。
「種類を問わずコウモリは凶悪な病原体の宝庫です。直接触らなくても洞窟などには糞などが至るところにあり、ウイルスを吸引する恐れがあります」
好奇心や冒険心をくすぐられるかもしれないが、洞窟などには不用意に近づかないほうがよさそうだ。