コロナ禍の中、競馬が元気だ。今年3月に公表された日本中央競馬会(JRA)の2020年決算では、前年比約884億円増でなんと17年ぶりに事業収益が3兆円を超えた。
競馬だけではない。競輪、オートレース、競艇のいわゆる「公営競技」全般がやはり好調で、コロナがまん延し始めた20年2月ころからいったんは売り上げを落としたものの、映画館や遊園地・テーマパークが激しい落ち込みを見せる一方、公営競技はすぐに回復し、これら第3次産業の中で比べれば140%の水準を維持してダントツの存在感を示している。
「そんな公営競技の好調ぶりを示す代表的な存在が、大井競馬場や伊勢崎オートレース場を保有し賃貸する東京都競馬でしょう。9月1日に公表された中間報告書(今年前半の決算数値)では、売上高が前年同期比で約14%アップ、営業利益、経常利益も共に25%以上も増えていてまさに快進撃です。理由はIT化が進んでいるからで、スマホ向けゲームの『ウマ娘』のヒットの恩恵を受けた辺りも、このこととは無関係ではありません」(経済ジャーナリスト)
というのも、東京都競馬は競馬場や場外馬券売り場にいかずとも馬券が買えるインターネット発売システムの「SPAT4」を所有しているからだ。これはネット銀行決済にも対応し、他のIT企業の競馬サイトとも連動。だから、スマホ1つあれば、つながっている全国の地方競馬場の馬券の購入もでき、もちろん、レースのライブ観戦を楽しめ、出走表やオッズの確認もできる。
これがコロナ禍の中で受けたというわけだ。こういったシステムさえれば無観客レースでの収入減もカバーできるし、むしろ、スマホ1つでOKという手軽さから裾野も広がる。「ウマ娘」の波及効果が東京競馬場に結びつく理由もここにある。
「ウマ娘はCygamesがリリースした競走馬を擬人化したキャラクターを育成するゲームで、ヒットするまでは東京都競馬の社長もその存在すら知らなかったようです。ところが実際にウマ娘がリリースされて人気が出てくると東京都競馬の株価は1.4倍も上がり、同社の好決算にかなりの貢献をすることになりました。というのも、ゲームユーザーの中心である20〜30代の若者がリアルの競馬にも興味を持つようになり、SPAT4を利用して馬券を購入しているからです」(前出・ジャーナリスト)
非接触のニューノーマル、スマホ利用の手軽さ、多チャンネルの分野とのコラボ…といった、最近のヒットの要因をIT化は満たしてくれ、東京都競馬ではそれが好業績につながった。公営競技の世界はもはやITの世界なのだ。
(猫間滋)