世界の福本豊〈プロ野球“足攻爆談!”〉「強い阪神の敵は交流戦だけじゃない」

 プロ野球を楽しみながら、僕も新型コロナとの戦いを続けている。毎朝検温して、血中酸素濃度の数値も測っている。ついでに血圧も調べて健康そのもの。関西は「第4波」に襲われているから、予防は徹底しすぎるぐらいしている。用事で外出する時でも、電車は避けて自家用車で移動するなど、人との接触をなるべく避けている。それでも、どこで〝もらう〟かわからないのがコロナの恐ろしいところやけど。

 プロ野球選手は移動もあるし、ほんまに大変。何かあったら、自分一人だけの問題でなくなるから、無症状でも油断できない。考えたら以前は、多少の発熱ぐらいでは試合に出る選手が多かった。体は動くのに休まないといけないのはつらい。ちなみに、僕は熱や風邪など体調不良で試合を休んだことは一度もない。シーズン中は気が張っているから、風邪もひかんかったんやろね。熱が出るのは決まってオープン戦の最終戦の翌日。一瞬、気が抜けるのが理由だったのかな。それでも「熱とケンカや」と熱い風呂に長時間入って、汗を出した後、水やスポーツ飲料をガブガブ飲んだ。人にはお勧めできない独自の処置やけど、それで一晩寝たら治っていた。

 心が完全には晴れない日常で、関西を盛り上げているのが阪神の快進撃。20試合を終えた時点で貯金を12まで伸ばして、頭ひとつ抜け出した。昨年までは苦手としていた東京ドームの戦いでも、今まで巨人にやられていたような勝ち方が逆にできるようになった。4月20日の東京ドーム初戦なんてまさにそう。マルテ、大山、サンズのクリーンアップ3人がそろい踏みで5発を放つ圧勝やった。球場の入場制限がなかったら、どれほど虎ファンが盛り上がったことか。かつてなら佐藤輝効果もあって、連日超満員は間違いなかった。営業的な損失は大きい。

 だけど、今の阪神の強さは本物。この戦いを続けていたら16年ぶりの優勝が近づいてくる。怖いのは交流戦、パ・リーグ相手との戦い。開幕ダッシュに成功したセ・リーグのチームが、交流戦でガタガタになったことが過去に何度もあった。それと注意しなアカンのは今年は五輪の関係で、7月後半から8月中旬まで中断期間があること。その間に態勢を整え、前半戦とは別のようなチームも出てくるはず。外国人の来日が遅れて、開幕でつまずいたDeNAなんかは特にそう。

 つまり、阪神は勝てる時に勝っておかなアカン。油断したら何が起きるかわからん。巨人も必ず戦力を整えて立て直してくる。コロナで離脱していた丸らが復帰してきて、新外国人のスモーク、テームズが力を発揮するようになれば打線の破壊力は相当。経験豊富な原監督が簡単には独走を許してくれないと思う。

 それに何よりも怖いのがコロナ感染のクラスター。今は選手層が厚く、1人、2人ぐらい主力がケガで離脱しても、カバーできる戦力がある。昨年の韓国プロ野球2冠の新外国人ロハスも使うところがないくらいやからね。それでも集団感染で一気に主力が抜けたら、さすがにきつい。今年の阪神の最大の敵はコロナと言えるかもしれんね。

 東京五輪もどうなるかわからんけど、今、プロ野球が中止になったら世の中がシュンとなってしまう。僕も楽しみがなくなる。選手らはくれぐれも感染に気をつけて、いいプレーを見せてほしい。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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