世界の福本豊〈プロ野球“足攻爆談!”〉「これがソフトバンクの強さの秘密」

 わかってはいたけど、5年連続日本一を狙うソフトバンクは今年もやっぱり強い。開幕前の順位予想通り、スタートの戦いぶりを見ると頭ひとつ抜けている。打倒ホークスに執念を燃やすロッテとの開幕3連戦で3連勝を飾ると、4戦目のオリックス戦にも快勝して、12球団で唯一の4連勝発進。京セラドームの解説者席で、その強さを実感してきた。

 ソフトバンクが勝てる理由は投打だけではない、数字に表れない部分にもある。オリックスとの試合でもチーム全体の走塁意識の高さが感じられた。2回一死一、三塁の先制点は、栗原のレフトへの犠牲フライやった。浅い当たりのファウルフライのため、三塁走者のグラシアルは自重してもおかしくなかったけど、思い切ってスタート。左翼・吉田正の送球を中継した三塁・紅林は走ってこないと決めつけていたから、本塁に送球すらできなかった。続く2点目も、松田宣の右前打で二塁走者の中村晃が懸命に走って本塁を陥れた。助っ人やベテランも必死にベースランニングをするから素晴らしい。

 5回の松田宣の走塁も象徴的やった。先頭打者でヒットを打ち、センターがファンブルするのを見ると、すかさず二塁まで走った。普段から次の塁を本気で狙うオーバーランをしているからこそ、相手の隙をつける。ベテランのこういう走塁が若手の見本となり、伝統として受け継がれていく。

 松田宣だって活躍しないと、立場は保証されていない。昨年の内川がそうだったように、他のチームならクリーンアップを打てる選手が2軍に行かされるのがソフトバンクというチームやから。今年も栗原とのレギュラー争いに負けた上林が開幕前に2軍に落ちた。チーム内競争が激しいから、勝ち続けても慢心することがない。

 その緊張感があるからこそ、途中から出る選手もアピールするためにいい仕事をする。開幕3戦目の逆転サヨナラ勝ちは、1点を追う9回裏一死に代打・長谷川が3ボールから右前安打。二死満塁でも代打・川島が右前へ逆転サヨナラ打を放った。2人ともベンチスタートでも腐らずに気持ちがゲームに入っているから、いきなり出場しても活躍できる。ベンチの声もよく出ているし、仲良しこよしではない、ワンランク上のチーム一丸を感じる。

 また、守備も昨季以上の締まりがある。昨季途中にケガで離脱した今宮が正遊撃手として復帰したのが大きい。開幕2戦目は、初回二死満塁で鳥谷の三遊間のゴロをダイビングキャッチし、ノーステップの一塁送球でアウトにした。押し出し四球で1点を先に取られた直後で、あのプレーで試合展開が大きく変わった。9回にはサヨナラ打のヒーローとなり、攻守にチームを引っ張っている。周東も課題だった二塁の守備が昨年より上達した。投手陣は千賀、東浜のエース格2人に中継ぎエースのモイネロを欠いても、あまり影響を感じない。この3人が復帰したら、盤石の体制になる。

 対抗馬とみられていた楽天は、田中将が故障で開幕2戦目の先発を回避した。マー君が復帰するまで、ソフトバンクに食らいついていかなアカン。ほんまにパ・リーグの5球団は包囲網を敷かないと、春からホークスの独走態勢になってしまう。コロナ禍でも無事に始まったシーズンを、頑張って盛り上げてほしい。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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