トランプ去って、天敵CNNの視聴率が45%ダウンの大打撃

 あの男がいなくなればせいせいすると思っていたものの、実際いなくなったら困っているのがアメリカのメディアだ。

 特に困っているのがCNNだ。ワシントンポストによると、プライムタイム(20時~23時の、1日の中で最も視聴率が高くなる時間帯)基準でこの5週間ほどで視聴率が45%も低下したというのだ。

 アメリカの中でもCNNはトランプに最も批判的で、大統領就任後、最初の記者会見からトランプはCNNのことを「フェイク・ニュース」と呼び、記者とは何度となく言い争ってきた。

「同じことはリベラル色が強いアメリカの有力ケーブル放送のMSNBCにも言えて、同じ期間で26%下落しているそうです。保守とリベラルの二項対立は相手があって自ら違いが際立つのと同じように、批判を受ける政治家と批判するメディアは実は相互依存の関係であることが分かります」(社会部記者)

 あの通りのお騒がせ男だっただけに、なんだかんだ言いつつニュースを提供してきたのは事実。しかも記者に対し、しょっちゅう噛みついてはケンカをしていたのだから、それはまさにプロレス。見飽きないというものだ。

 日本でも事情は同じで、19年にトランプが来日して観戦に来場した5月26日の大相撲夏場所のNHK総合の視聴率は、関東地区で最高30.6%にも上った。

 ただ、じゃあトランプ寄りと批判されていた保守系メディアはどうかと言うと、その最右翼のFOXニュースも視聴率が6%下落したというが、こちらはその程度の影響だ。

「実はこうなることはアメリカ国内では既に事前から予測されていたことです。特にそれが顕著だったのは、トランプ支持者による連邦議会占拠事件があった時です。この日、CNNの平均視聴者数は520万人で開局40年の歴史で最多を更新しました。同じワシントンポストの記事では、トランプが大統領になる1年前の14年はCNNとFOX、MSNBCの3大主要ケーブルテレビのプライムタイムの視聴者は合計280万人ほどだったものが、大統領就任3年目の19年には530万人にまで増えていたと伝えています」(前出・記者)

 ニュース番組はニュースの有無に左右されるので、波があるのは考えてみれば当たり前のことだ。例えばオバマが黒人初の大統領になった時もCNNは好調だった。だが熱が冷めると下火になる。

 CNNとFOXの比較で言えば、FOXは5年連続でケーブルテレビの視聴率1位を維持していたが、バイデンの大統領選後にCNNに首位を奪われていたが、結局、現在では首位に返り咲いている。

 さてそのトランプだが、お得意のツイッターからは永久追放されているので、自前のメディアを準備中と伝えられている。実は“敵役”が戻ってくることは、アメリカのリベラル系のマスコミにとっては朗報と言えるのかもしれない。
 
(猫間滋)

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