福井が「県民衛星」打ち上げに成功、宇宙から地方創生の時代へ

 日本時間の3月22日、ロシアのソユーズロケットが打ち上げられたのだが、搭載された18カ国38基の衛星の中に、日本の“自治体初”の衛星も含まれていた。福井県と県内企業などによって開発された超小型衛星の「すいせん」だ。名前は県花から取った。水仙は日本海の厳しい風雪に耐えて花を咲かせるからだ。

 翻れば、09年には大阪の中小企業が「まいど1号」の小型人工衛星を打ち上げ、有名どころではホリエモン・ロケットのインターステラテクノロジズやテスラCEO・イーロン・マスク氏のスペースXといったベンチャーも宇宙ビジネスを手掛けるようになっている。そして今度は自治体までが宇宙に乗り出したのだ。

「今回の自治体衛星の誕生は、そもそも内閣府と経産省が主導したものです。両者は16年に宇宙をキーワードにした新産業に関心を持つ企業や個人の連携を促進するために『スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク(S−NET)』を創設。その一環として衛星データ等を用いたビジネスの創出に興味がある自治体を18年に募集、北海道、茨城、山口、福井の4県が選ばれたのです」(全国紙記者)

 その中でも群を抜いて積極的だったのが福井県だった。そして今回、史上初の「県民衛星」の打ち上げに漕ぎつけたというわけだ。

「福井県の地場産業と言えば、『繊維王国』とまで呼ばれる繊維と鯖江で有名なメガネと相場が決まっていました。ただ製造業は人件費の安い国が有利になるので、県としては5カ年計画で新産業の戦略を探っていました。その中、14年の検討会で出てきたのが『宇宙』だったそうです。そして県内外の企業に働きかけて、福井県民衛星技術研究組合を作って開発に当たってきました」(前出・記者)

 県としては今後、河川や森林の変化の観察、ハザードマップの作成、農業へのデータ活用を考えているという。スペックとしては、車までが衛星で認識可能なレベルだ。

 ところでS−NETの自治体募集は00年にも行われ、その結果、新たに福岡と大分が加わっている。今後はもしかしたら宇宙から地方創生、という時代が到来するかもしれない。

(猫間滋)

*写真はイメージ

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