マツコ・デラックスと関ジャニ∞の村上信五がMCを務める「月曜から夜ふかし」(日本テレビ系)でも、個性豊かな人々が闊歩する町として、いまや街頭インタビューの定番として登場する、足立区の竹ノ塚や北千住周辺。そんな足立区のディープな魅力をふんだんに盛り込んだエッセイコミック「出没!アダチック天国 極」(竹書房)が隠れた人気を呼んでいる。
同著は足立区生まれ、足立区育ちで現在も足立区在住という女性編集者が「足立区をイメージアップしたい」として企画。2018年に第一弾が単行本化され、今回の『極』はその2作目となるが、前作に引き続き「足立区のリトルマニラ? 竹ノ塚に潜入」「いま昭和何年? 一杯80円の激安ラーメンの味は……」「区役所内のレストランで給食が食べられる?」といった、マニア心をそそる、選りすぐりのネタが満載。
SNS上には、《現代日本の話だとは思えない!でも、ワイルドで面白そう!》《犯罪が多発する街、というイメージがあったけど、行ってみたい店も多かった。コロナが収まったら行ってみよう》《まじ、足立区役所で出している給食食べたくなった!》といった反響も続々。足立区在住のフリーライターが語る。
「確かに以前、足立区は刑法犯認知件数で東京23区のトップに君臨していました。しかし、2008年にスタートした街の清掃や美化に努めることで犯罪を減らす『ビューティフル・ウィンドウズ運動』などによって、徐々に成果があがり、平成30年度の警視庁の犯罪データによれば、なんと『治安のいい街』の上位11位にランキングされるまでになりました。また、昔から足立区には『子どもの学力が低い』というイメージもありましたが、こちらも2011年に始まった『学力定着プロジェクト』で、かつて全国平均未満だった小学生の学力が2014年度に初めて国語A、国語B、算数Aの区平均が全国平均となり、2017年度には全教科で全国平均を上回りました。ただ、実際駅前や公園などにはヤンキーがたむろしていたり、昼間から酒をあおる人たちがいるのも事実で、相変わらず自転車泥棒や喧嘩といった軽犯罪は多い。それが、足立区のネガティブなイメージをぬぐえない大きな理由なんです」
同著でも1巻、2巻を通し、区がモスキート音を使って不良を撃退しようとする「ヤンキーコロリ事件」や、花火大会会場の河川敷に油性スプレーで場所取りする「マナー違反の横行」などのネタが度々登場する。さらに、前出のライターによれば、
「不思議なことに『月曜から夜ふかし』で街頭インタビューに答える足立区民の大半がノーマスクに、ノー・ソーシャルディスタンスなんですが、ネット上では、《我が道を行く、という感じがなんとも足立区っぽい》《足立区恐るべし!》と、へんなエールも送られていて……。ま、善し悪しは別として個性的な街が多い区ということだけは間違いないでしょうね」
かつては、ビートたけしが愛着を込めて「おいらにとって最低の街」と呼んだ足立区。一昔前まではガラが悪い街の代名詞だった北千住も、区画整理が進みイメージ一新。常磐線、日比谷線、千代田線、東武伊勢崎線、つくばエクスプレスが乗り入れアクセス抜群なため、昨今では「穴場だと思う駅ランキング(SUUMO)」で4年連続1位を獲得している。その光と影とのコントラストが足立区の魅力なのかもしれない。
(灯倫太郎)