カープに”新人守護神”誕生か!佐々岡監督が姿を重ねる「背番号20」のアノ剛腕

 背番号20、高く足をあげる投球モーションも同じ――。今季のカープは2003年の再来となりそうだ。

「クローザーとして予定していたフランスアが右膝の手術を受け、開幕は絶望的。ただ、『状態が良くない、手術もある』との情報は早くから佐々岡真司監督に届いていたので、新クローザーを意識しながら、キャンプ、オープン戦を見ることができました」(ベテラン記者)

 佐々岡監督のお眼鏡にかなったのは、ドラフト1位ルーキー・栗林良吏。同じくルーキーの大道温貴や、塹江敦哉、ケムナらも候補に挙がっていたが、「三振を狙いに行ける」ことが決め手になったようだ。

「フォークボールですよ。直球と同じ腕の振り、落差の大きさが決め手になりました」(同前)

 ルーキーがクローザー役を任されれば、DeNAの山崎康晃以来だ。これまでも実力的には務まりそうな新人投手はいたが、「新人に任せるのは怖い」というのが指揮官の正直な心境だ。それでも佐々岡監督があえて“冒険”に出ると決めた理由は、フォークボールの精度だけではなかった。

「栗林のフォームが永川勝浩投手コーチに重なる部分があったのです」(球界関係者)

 永川コーチも、ルーキーイヤーに守護神に抜てきされ、長く広島のブルペンを支え続けた。”背番号20″は永川コーチが現役時代につけていたもので、左足を大きくあげる投球フォームも栗林に似ている。

「永川は相手打線に舐められたらいけないとし、マウンドでは意識して厳しい表情を作っていました。栗林は表情を変えません。精神的な強さという点でも似ています」(同前)

 社会人の名門・トヨタ自動車の出身。潜り抜けてきた修羅場の数は、学生出身の他投手の比ではない。栗林が「大学時代の指名漏れ」の屈辱をバネに這い上がってきたことは有名な話だ。

 指名当時は「先発要員の一角に」と伝えられおり、クローザーでのスタートはチーム事情だが、社会人時代にもリリーフは経験している。フランスアが再合流するまでの代役としては、これ以上ない適任だと思われる。ところが――。

「フランスアは緒方孝市監督の時代から先発に転向したいと首脳陣に相談していました。栗林がクローザーで活躍したら、フランスアとどちらを先発に転向させるか揉めそう」(同前)

 ちなみに、永川コーチが新人守護神だった03年、チームは5位。個人として3勝3敗25セーブの好成績を残したにもかかわらず、だ。クローザーとしてはあの年の再来を、チーム成績はもっと「上」を狙いたい。

(スポーツライター・飯山満)

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