レッドソックス・澤村拓一投手が、キャンプ合流2日目の3月3日(日本時間4日)、初のブルペン投球を行った。球団スタッフが計測したところでは、ボールの回転数は2400前後。メジャーリーグのトップクラスのピッチャーがシーズン佳境で2500回転を出すとされているので、この時期にすれば、かなり状態が良いと見ていいだろう。澤村も「たくさんの人が見ていて、ちょっと力んだかな」と笑みを浮かべていた。
澤村の初ブルペンを見守っていた“ギャラリー”のなかに、アレックス・コーラ監督もいた。しかし、この投球前に澤村に対し、厳しい見方もしていた。
「現実的に考えれば、抑えの経験が多いのは澤村だが、そうはしない」
この澤村に関するコーラ監督のコメントは、地元紙「ザ・リパブリカン」に掲載されたもの(2月28日付)。レッドソックスは救援投手陣の弱体化を指摘されており、それが澤村獲得にもつながった。交渉途中で「救援投手陣の顔ぶれを見れば、澤村が適任では?」との見解を示す米報道も多かった。
また、コーラ監督は地元放送局NBCスポーツ・ボストンで「バーンズ、オッタビノ、澤村が、クローザーの候補」とも語っている。「実績は関係ない。全救援投手にチャンスがある」と言いたかったようだが、こんな指摘も聞かれた。
「レッドソックスとの交渉に澤村も同席したことは日本のメディアでも紹介されています。このとき、コーラ監督も球団に呼び出され、その席上で2人は直接対話をしています」(ベテラン記者)
澤村は家族旅行を途中で切り上げてきたコーラ監督に頭を下げ、ワインをプレゼントしている。和やかなムードで会談が続いたが、コーラ監督はこうも質問したそうだ。
「なぜ、レッドソックスに来たいんだ?」
澤村はメジャー挑戦にかける思いをぶつけた。しかし、獲得の意向を示して、交渉に持ちこんだのはレッドソックスのほうだ。
「コーラ監督はアストロズでコーチを務めていた2017年の『サイン盗み』で処分を受けましたが、現役時代はレッドソックスの選手です。まだサイン盗みが公になる前の2018年、レッドソックスの指揮官として初球からフルスイングしていく強気な攻撃を指示していました。勝利への執着心も強い監督です」(米国人ライター)
澤村は“チーム愛”もアピールしていかなければ、クローザーのポジションを勝ち取れないだろう。日本で見せた闘争心むき出しのピッチングをコーラ監督にも認めさせなければならない。
(スポーツライター・飯山満)