レイズ筒香の覚醒で「走れない1番バッター」流行の兆し

「1番」って、どうなのよ!? 

 レイズの筒香嘉智選手がレッドソックスとのオープン戦に出場し(3月26日/現地時間)、2打数1安打1四球1得点。最近10試合で2割9分1厘と順調な仕上がりを見せている。だが、気掛かりなこともある。打順は「1番」、ことのころずっと「1番・一塁」で出場しているのだ。筒香はリード・オフマンのタイプではないのだが……。

「単独スチールやスピード感のある走塁が期待できるタイプではありません。でも、レイズのキャッシュ監督は『1番』で使う構想に自信を深めています」(在米ライター)

 地元紙タンパベイ・タイムズによれば、「すんなりとはまる打順を見つけてあげたい。いいスタートを切らせ、いい感覚をつかんでもらうのが大事だから」と、同監督のコメントが掲載されていた。また、レイズ戦を中継する地元放送局・FSサンに出演したエリック・ニアンダーGMも「1番・筒香」について質問され、「良い打順を見つけてあげたようだ」と答えていたという。「1番・筒香」を歓迎しているような雰囲気だ。地元ファンも好意的だという。

「19日のレッドソックスとのオープン戦で、筒香が1番でテストされたんですが、第2打席で最速102マイル(約164キロ)を誇るイオバルディから、左翼線への二塁打を放っています。このとき、筒香が見せた打ち方、応用力を見て、キャッシュ監督がピンと来たようですね」(同前)

 メジャー移籍1年目の昨季、筒香は150キロ台後半の直球に苦しんだ。バットを振っても差し込まれてしまい、凡フライになることが多かったのだが、左翼線二塁打では新たな直球対策を見せていた。バットを寝かせ、上から叩くようにして弾き返している。

「筒香は選球眼の良いバッターです。でも、その長所が好打率に結びつきませんでした。変則打法でしたが、キャッシュ監督はバットを寝かせる応用力に驚いていました。『好きに打ちなさい、何をやってもいいから』の発想です。もっとも、打席数の多い1番を彼に託してみたら面白いことになりそうだと思ったみたい」(同前)

 そう言われてみれば、キャッシュ監督はリリーバーを先発マウンドに送る「オープナー作戦」の発案者でもある。この変則投手起用は他球団もマネするほどで、昨年も「4人制の新型ローテーション」を繰り広げ、米球界を驚かせている。“力士体型の1番バッター”が出現しても、米ファンはもう驚かず、むしろ、どうなるかを楽しんでいるというわけだ。

「キャッシュ監督は、昨年のワールドシリーズ第6戦で、好投している投手をいきなり交代させ、『データ上で対戦成績が悪かったから』と説明していました。その交代は失敗に終わりましたが」(スポーツ紙記者)

 現地関係者によれば、筒香は不慣れな一塁守備を克服するため、サブグラウンドで自主的に居残り練習を重ねているという。そんな筒香を見て、打撃不振に喘いでいる状態をなんとかしてやりたいと、キャッシュ監督は思ったそうだ。「1番・筒香」が成功したら、オープナー同様、日本球界でも模倣する球団が現れるかもしれない。

(スポーツライター・飯山満)

スポーツ