コロナ禍で日本の死亡数が減少、医療費の大幅マイナスとの因果関係は?

 厚生労働省が2月22日に人口動態の統計の速報値を公表したのだが、昨年(2020年)の死亡数が19年より約2万6000人も減っていたことで、「コロナ禍になぜ?」と話題になっている。

「20年の死亡数は138万4544人で19年より2万5917人も少ない数字でした。このところ毎年約1万8000人ずつ増えてたところにコロナの流行でその数は増えると思いきや、逆に11年ぶりに前年を下回ったんです。高齢化が進んでいるので、統計的には予測できなかった数字と言えます」(社会部記者)

 アメリカやイギリスではコロナの感染者数・死者数がそのまま死亡数の増加につながっている。ところが日本では逆に減ったというのだから、確かに不思議な話だ。理由はいくつかあるのだろうが、多く指摘されるのが、コロナでかえって衛生面に気を使うようになったからというものだ。

 厚労省では、毎年9月から翌年の5月末までのインフルエンザの発生状況を取りまとめているが、今シーズンは2月14日までにようやく1000人を突破したばかりで、これは過去5年間の平均患者総数が約111万人なので、通常の0.1%未満と驚異的に低い数字となっている。もちろん、インフルエンザの流行はシーズン毎に大きく異なるものだが、それにしても低すぎる。マスク、手洗いの慣行が大きく貢献したことはほぼ間違いないだろう。

 また、交通事故死が少なくなっていることも全体の数字を押し下げた要因だろう。警視庁が1月4日に発表した20年の交通事故死者数は2839人で前年より376人少なかった。4年連続で戦後の最少記録を更新中なのだ。そもそも昨年は外出自粛で交通量が大幅に減少、交通事故の発生そのものが前年に比べて約7万2000件も少なかった。人が外に出なかったのだから、交通事故に限らず、「転倒・転落」「溺死」といった不慮の事故全般が減っているはずだ。

 さらに考えられる理由は、皮肉ながら「受診控え」で医者にかかる人が減ったことだ。

「コロナで大きく変容したのが、マスクなどの衛生面での慣行と外出自粛、そして医療の現場の3つ。事実、受診控えが続いて、昨年11月に厚労省がまとめた医療費の動向では、4〜7月とマイナスが続いて累計で6.9%のマイナスで、20年度は制度が変わって1.8%のマイナスとなった00年よりもさらにマイナスになると見られています」(前出・社会部記者)

 死亡数が少なくなって、なおかつ医療費がマイナスになるというのはなんとも皮肉な話だ。大病が見つからなかったことで、命を危険にさらす手術を受けなくてすんだというケースも考えられるが、その因果関係やいかに…。

(猫間滋)

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