コロナ禍で数千万円のフェラーリ、ポルシェがなぜ売れているのか?

 コロナ禍で経済低迷の出口が見えない中、自動車の販売が苦戦を強いられている。

 日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会のデータによれば、2020年の新車販売台数は、登録車(小型乗用車と普通乗用車の合算)、軽乗用車ともに前年割れの状況。

「登録車は前年比−12.2%の247万8832台。また、公共機関の利用者離れによって、一時は販売が伸びていた軽乗用車も、結局蓋を開けてみたら、前年比−10.0%の133万1149台という結果に留まりました。さらに、輸入車に至っては前年比−14.7%の25万4404台にまで急降下していますからね。外車を扱うディーラーにとっては、それこそ死活問題だと言っていい状況が続いています」(自動車雑誌ライター)

 輸入車というとすぐに思い浮かぶのが、ベンツやフォルクスワーゲン、BMWといった車種だが、前出のライターによれば、

「前年と比較するとベンツが—14.3%、ワーゲンが—21.8%、BMWも—23.7%で、いずれもマイナスです。販売不振の最大の理由は、販売店が時短営業になり、来店するお客さんが大幅に減ったこと。外車の場合、販売店に足を運んでいただかないと新規のお客さんを獲得することが難しいですからね。コロナでそれが出来なくなってしまったことが大きく響いているのでは」と分析する。

 ところが、苦戦を強いられるベンツやBMWをしり目に、売り上げを伸ばしているのが、フェラーリやポルシェといった高級外車だ。

「実は、今年2月2日、フェラーリ社が発表した20年度の世界新車販売(出荷ベース)によれば、中国を除いたアジア太平洋地域では、販売台数が前年比1%増の1520台とプラスを維持。しかも、日本での販売台数はアジア太平洋地域で最多となる1085台で、これは前年比の24.7%。ただ、この数字は、あくまでも新車の販売台数ですから、データのない中古市場ではさらに売れていることは間違いない。ポルシェも新車で+1.3%の7284台の売り上げが記録されていますからね、高級外車については、ちょっとしたコロナバブルが起こっていると言っても過言ではないでしょう」(前出・ライター)

 当然のこと、フェラーリにせよ、ポルシェにせよ、新車なら数千万円。中古でも数百万円は下らない車種だ。そんな車が、このご時世に売り上げを伸ばしているとは驚くばかりだが、今年2月にフェラーリのオーナーになった自営業の男性(50代)はこう語る。

「昨年、政府のコロナ対策で、タダ同然の金利で4000万円までお金が借りられるようになったでしょ。で、取引している銀行から、『金を借りてくれ』ってせっつかれてね。もともと、ポルシェに乗っていたんだけれど、以前から次に買うならフェラーリだと思っていたから。海外旅行にも行けないし、だったら、ということで購入しました。ただ、昨年8月に買って納車までに半年かかってようやく届いたのが今年2月。でも、それがいつでも、どこででも買えるベンツやBMWと違う、フェラーリならではの魅力なのかもしれませんね」

 さらに、4月16日には、東京港区南麻布に”3億円超のスーパーカー”として知られる、ブガッティの正規販売店「ブガッティ東京」もオープンした。

「同社は、都内でランボルギーニやマクラーレンなど15ブランドのディーラーを持つ会社で、ブガッティの正規ディーラーは世界14カ国・27店舗しかないため、文字通り、あのスーパーカーを扱う日本で唯一の正規ディーラーになったというわけです」(前出・ライター)

 主力モデルである『シロン』は7993ccW型16気筒エンジンを搭載。最高出力は1500psに達するという”怪物”だが、価格も240万ユーロ、日本円にすると、なんと約3億1294万円と、桁違い。まさに明と暗がくっきりと分かれてしまった外車市場。さて、今後の展開は……。 

(灯倫太郎)

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