山口俊は“SF”ジャイアンツへ、古巣よりもマイナー契約を選んだ理由とは?

 日本帰還よりも「マイナー契約」。メジャーリーガーとして生き残れないのなら、日本球界で主力選手として活躍したほうが…。かつての日本人メジャーリーガーには少なからず、そんな考えがあったはず。田中将大投手のように実績に見合う年俸提示がされず、古巣帰還を選択したケースもあるが、メジャーリーグではマイナー契約の捉え方も変わりつつあるようだ。

 昨季は17試合に登板して防御率8点台と苦しみ、ブルージェイズを事実上の戦力外となった山口俊投手が、古巣・読売ジャイアンツへの帰還よりも、SFジャイアンツとのマイナー契約を選んだことも、少なからず影響しているのではないだろうか。

「2月20日(現地時間)にジャイアンツとマイナー契約を結び、スプリングトレーニングに参加。そこでメジャー契約を目指します。開幕ロースターに入れなければ契約破棄となります」(米国人ライター)

 古巣に帰還すれば、好待遇も約束されただろう。しかし、20−21年オフの米フリーエージェント市場の動きを見直してみると、「このクラスの選手がどうして?」と思う契約も少なくない。新型コロナウイルスによる経営難で安く買いたたかれたケースだけではない。

「メジャーか、マイナーかのボーダーライン上にいる選手、実績の乏しい選手はかなり低い年俸を提示されました。その安いメジャー契約を蹴って、他球団とマイナー契約をいったん交わし、開幕ロースター入りを狙い、そこで最初のメジャー契約よりも高い年俸を勝ち取るんです。そういう選択をした選手も少なくありません」(前出・米国人ライター)

 メジャー契約を勝ち取る自信があるから、そんな選択ができたのだろう。

 その一例が通算125セーブ、82ホールドをマークしたスティーブ・シシェック投手だ。

 ホワイトソックスに在籍した昨季こそ成績はイマイチだったが、一昨年はカブスのブルペンリーダーでもあった。今年2月にアストロズとマイナー契約を結んだことで、球団側はコンディションとともに復活の可能性を確認でき、シシェック自身もスプリングトレーニング後の契約が、他球団の提示した年俸額よりも若干高くなることに“旨み”を感じているという。

 シシェックのような選択をした選手は少なくなく、山口もマイナーからの再出発を堂々と選ぶことができたのだろう。

「山口はSFジャイアンツでメジャー契約を勝ち取れなかった場合、退団となります。古巣巨人も山口ともう一度交渉できます」(スポーツ紙記者)

 米FA市場において、メジャー契約をチラつかせるだけでは通用しなくなった。これも、新型コロナウイルス禍の影響だろう。

(スポーツライター・飯山満)

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