五輪組織委員会は大所帯にふくらみ、その職員は3500人にのぼる。もしも五輪中止となれば、都庁やスポンサー企業からの出向組のキャリアに大きな空白を作ることになりそうだ。
かつて“後見人”と目された森喜朗前会長(83)のフォローも期待できず、末端の職員たちが身の振り方を心配する一方で、幹部職員たちもどこか落ち着かない様子。五輪中止により、出入り不透明なカネが炙り出される可能性が指摘されているのだ。
「五輪中止となれば、実入りはゼロの上に、莫大な支出だけが記録に残ります。そのため、無事に開催された時よりも厳しい監査が入るでしょう。東京五輪招致の段階でも、元JOC会長の竹田恆和氏(73)がセネガル人のIOC委員に賄賂を支払った疑惑や、一部のメディアで問題視されていた組織委員会理事の高橋治之氏(76)が、ロビー活動で費やしたカネも洗いざらい精査される。視察先の立ち寄り場所や手土産など、経費の全てが本当に必要だったのか、明らかになるのを恐れる幹部は一定数いるでしょう」(組織委員会関係者)
テーマ曲が誕生し、「ロケットマン」による演出が行われた84年のロス五輪から商業色が濃くなり、本来の五輪の在り方が問われてきたが、
「今回の中止を転機に検証の気運が高まり、過去の大会まで調査はさかのぼるかもしれない。この構図も、皆が組織委員会のトップに立ちたくない理由のひとつと言われます。森氏を引き留めていた理由として、火ダルマになって全てを受け止める盾の役割を期待されていた、という話が出るほどです」(政府関係者)
ところで、中止の決定は日本だけの問題で収まらない。東京五輪の開催からおよそ半年後に予定している22年の北京冬季五輪にも影響は及ぶはずだ。
1月25日に中国の習近平国家主席は、バッハ会長との電話会談で「中国は新型コロナを封じ込めて経済回復を実現し、五輪開催へのふさわしい条件を整えた」と強気の発言をしているが、
「冬季五輪が開催される2月は、コロナ感染のピークにあたる時期。夏季の東京五輪を中止にして、冬季の北京をそのままとはならない。『武漢ウイルス』と呼ばれるほど、コロナの起源として疑われている中国なら言わずもがなです。無理やり開催を強行した場合、世界の選手団が集団で辞退する歴史的ボイコット事件になりかねません」(社会部デスク)
ただでさえ、ウイグル問題で、各国が北京五輪を辞退する潮流が生まれようとしている。東京五輪の開催可否は対中外交にも影響を及ぼすのだ。問題山積みの東京五輪開催。橋本聖子新会長(56)はこれら重荷をどうさばいていくのか。手腕が注目される。
※「週刊アサヒ芸能」3月4日号より