2019年のカンヌ国際映画祭パルムドール、今年のアカデミー賞の作品賞のダブル受賞を果たした韓国映画の「パラサイト 半地下の家族」。日本でも大ヒットしたのでご覧になった人も多いかもしれないが、父親が事業に失敗して“半地下マンション”に暮らす貧しいキム家の長男が経歴を偽って、IT企業経営で高台の屋敷に住むパク家の長女の家庭教師を引き受けたのを皮切りに、母親は家政婦に、父親は運転手となって一家でパク家に寄生(パラサイト)していく過程が描かれる。
この作品はフィクションでありながら、現代の韓国社会を生映ししたとの誉が高かった。そして今、文在寅大統領の支持率が危機的な状況に陥りつつあることでリアルな問題として浮かび上がっている。
「菅内閣が10%の支持率を落として50%に低下したことが話題になっていますが、韓国はもっとひどいことになっています。12月7日に発表された文在寅政権の最新の支持率は37%台で、政権発足後に80%あった支持率はもはや半分以下。原因はコロナと検察改革を進めるために行った強引な検事総長の懲戒、狂った不動産事情の『3乱』と言われています」(韓国事情に詳しいジャーナリスト)
そしてこの不動産事情がまさに映画の「パラサイト」を彷彿させるものだという。
というのも、ソウル市内の不動産の値上がりが止まらないからだ。文政権がスタートした2017年段階からマンションの平均価格が5割も上昇したという報道もある。だからソウルは格差社会の勝ち組の金持ちしか住めない街になっているのだ。このまま家賃高騰につながれば、半地下で暮らす庶民から恨みを買いそうだ。
しかも日本でも問題になっている東京一極集中など比ではない。ソウル市に仁川市などを含めた首都圏の人口は約2596万人で、首都圏外の約2582万人を上回るという超超一極集中。韓国は大学入試に遅刻しそうな受験生をパトカーで試験会場まで送り届けることで知られる超学歴社会だ。だから、その難関を突破して高給取りになったエリートが子育てに適した土地としてソウル市内にマンションを購入し…との循環で、ソウルは負け組が足を踏み入れようとするのを追い払う場所となっているのだ。
これを見かねた文政権は今年になって相次いで住宅政策を打ち出したのだが、これが物の見事に裏目に出たのだとか。
「6月に対策法を施行したところ、住宅ローンの審査が厳しくなったうえに新たな建築規制が加わったことでマンション供給が鈍って更なる価格上昇を招いたんです。さらには複数の不動産を所有しにくくするために不動産保有の税金を引き上げたんですが、もっとマンションを買えない状況に陥っただけでなく、既に保有している人からは『国に家賃を払っているようなもの』と、怒りばかり買う形になったんです」(前出・ジャーナリスト)
一方、青瓦台のトップらは「自ら範を糺すべき」と、複数のマンションを所有していたら、それを売って1つだけの保有にするとのお達しを出したのだが、当の幹部が地方のマンションは売ったもののソウルのマンションはちゃっかり残していたという誤魔化しが明らかとなって国民はさらにカンカンに。
韓国では、ソウル市内に住みたいという庶民の願いに乗じて、エリート層の資産形成につながっているのが現状。どちらがパラサイトしているものやら。
(猫間滋)