読者の皆さんは「相続」について、どの程度ご存じでしょうか。
「相続対策=資産家が行うもの」というイメージが強いかもしれませんが、総額3000万円以上の遺産があれば課税の対象になる可能性が出てきます。
また、相続税が発生するか否かにかかわらず、相続を巡る親族間のトラブルはあとを絶ちません。遺産分割事件(家事調停・審判)の件数は、1997年は約1万300件だったのに対し、2017年が約1万6000件と、20年間で約1.5倍に。また、遺産分割事件(認容・調停が成立した件数)は、相続財産額5000万円以下が約76%を占めているため、たとえ相続税がかからない世帯であっても、相続の準備は進めておいたほうがよさそうです。
相続が「争族」とならないよう、事前にアドバイスやサポート業務などを行うのが「相続診断士」。試験では、相続に関する知識や実務の能力をはかります。
それでは例題を見てみましょう。
〈問1〉基本的には被相続人(故人)が所有していた全ての財産が相続対象となりますが、故人の一身に専属する権利・義務は相続対象となりません。以下のうち、それに該当しないのは【1】年金受給権、【2】運転免許、【3】扶養請求権、【4】保証債務のうちどれ?
〈問2〉遺言書には3種類の方式があります。故人が自筆で書いた「自筆証書遺言」、法律の専門家である公証人が作成した「公正証書遺言」とあとひとつ。自筆である必要はなくても公証役場で認証を必要とする遺言書は次のうちどれ? 【1】自公遺言、【2】中間遺言、【3】秘密証書遺言、【4】非公開遺言
実際の試験では○×式、択一式などで出題され、例題の答えは〈問1〉が【4】、〈問2〉が【3】です。
試験区分は相続診断士と上級相続診断士に分かれており、全国のテストセンターで随時受験できるコンピュータ試験となっています。
この資格が役立つ職業といえば、まずは司法書士やファイナンシャルプランナー。相続の準備を考えている高齢者の顧客に対して、より的確な相続のアドバイザリー業務を行うことができるでしょう。
こうした職に就く人でなくても、自身や親族が相続に直面する機会はあるはず。相続にかかる節税の知識を持っておいて損はありません。
例えば、相続の節税対策として生前贈与を選択する人は多いですが、被相続人が亡くなる3年以内に移していた財産は、相続財産と見なされ、相続税の課税対象となります。
また、養子も民法上の法定相続人と認められ、基礎控除の額に大きく関係してきますが、養子をむやみに増やしても他の相続人とモメる可能性があり、慎重に判断する必要があります。
100人いれば100通りあると言われる相続。あらゆるケースの終活に対応して「有終の美」を演出してはいかがでしょうか。
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鈴木秀明(すずきひであき)/81年生まれ。東京大学理学部、東京大学公共政策大学院を経て資格アドバイザーに。取得資格数は約700。