TwitterなどのSNS上で、アニメや漫画などの人気キャラクターや著名人などになりきった上で投稿を行うという行為は、匿名という側面を持つネット社会では定番となった“ネタ”であり、攻撃性のある不快な内容や、なりきった対象を貶めるような投稿でなければ、多くのユーザーから親しまれ楽しまれてきた。しかしある人気“なりきりアカウント”が「中の人」の著書出版を告知したことから権利問題に発展するのではないかと疑念の声があがっている。
話題となっているのは人気漫画「ドラゴンボール」の主人公・孫悟空になりきり、植物や種子の豆知識を投稿することでかねてから注目を集めている「やけに植物に詳しい悟空」さんだ。「てぇしたもんだ…」「気ぃつけてくれよな!」といった悟空特有の口調で披露される豊富な知識の数々に、《おもしろくてわかりやすい》と評判が評判を呼び、今や13万以上のフォロワーがいる人気アカウントである。
もちろん、アカウントに設定されていたプロフィール画像は、孫悟空の画像だったのだが、ある異変がネット上で指摘されているのだ。
「悟空になりきって情報を発信していたアカウントですが、もちろん本物の悟空ではなく、“中の人”が存在します。11月25日、大和書房さんからその“中の人”の著書が出版されると発表があり、このなりきりアカウント上でもその告知を発表しました。『こいつはオラだ!私事だけど、本を出すことになった…!』と、これもまた面白く、悟空口調での投稿。現在予約受付の段階にも関わらず、Amazonの売れ筋ランキング上位に躍り出るなど話題沸騰中です。しかし、著書の告知以降、プロフィール画像に設定されていた孫悟空の画像が何者かの通報により削除されたようで、現在は閲覧できない状態に。“中の人”の公表とともに著書の宣伝ともなると、アカウントとしては『悟空になりきって豆知識を投稿』というとらわれ方から、『悟空を騙って本の宣伝』と受け取られてしまったのでしょうか。なお、『妙に洋蘭に詳しいフリーザ』や『妙に地球の植物に詳しいピッコロ』といった類似アカウントはいまだキャラクターの画像がプロフィールに使われています」(メディア誌ライター)
ネット上では様々な意見が飛び交い《書籍化はうれしいけどギリギリアウト…なのか?》《表紙に『#オラ草が知りてぇ』(人気となったハッシュタグ)ってガッツリ入ってるのが擁護しづらい》《権利問題で集英社に目をつけられて画像消された!?》《ネットのなりきり文化はどこまでセーフなんだろう》と著作権問題に関して憶測が憶測を呼んでいる状況だ。
多くのフォロワーから届いたコメントは“中の人”の著書出版に関する喜びの声だけではないようだ。ここまで発展したネット文化には曖昧なルールだけではなく明確な線引きを明らかにすることが必要なのかもしれない。
(浜野ふみ)