今や企業にとって最も恐れる事態のひとつがSNSの“炎上”によるイメージダウンだ。
老舗タイツメーカー「アツギ」の公式ツイッターが炎上したのは11月3日のこと。同社が猛批判を浴びた理由は、キャビンアテンダントなどに扮した女子生徒がタイツやストッキングを着用したなまめかしいイラストを投稿したためだ。
このニュースを受けて、ネット上では《男性を読者層にした媒体でやるなら少しは理解できなくもないけど、女性や子どもが見るツイッターでこんな投稿したのはありえない》《女性が穿くタイツのPRなのに、何で男に媚びるような性的なイラストを描くのか意味がわからない》《いやいや、たかだかイラストにそこまで目くじら立てて怒ることか?》など賛否の声が上がっている。
こうしたアツギのケースもさることながら、近年は企業による炎上事件が多発している。10月には大手玩具メーカーが人気商品の着せ替え人形について「個人情報を暴露しちゃいます」とツイートして《気味が悪い!》などと猛バッシングを浴びた。その理由についてメディア論の専門家はこう解説する。
「企業が炎上する原因としては、今回のアツギのようなマーケティング戦略のミスに加えて、性差別や人種差別など様々ありますが、最大の問題は企業と消費者との間に大きな力関係が生まれていることです。企業としては消費者を怒らせたくないため、一度炎上が起こればすぐさま広告や投稿を取り下げてしまう。ここ近年でこうした事例が相次いでいるため、一部の消費者が鬼の首をとるかのように一企業に対して“集中攻撃”を仕掛ける側面もあるのではないでしょうか」
こうしたは“集団ヒステリー”とも言える批判のリスクに常に晒されているのが、企業の広報担当だ。大手メーカーの広報部に所属する40代の男性社員が苦労を語る。
「私が入社した頃のイメージでは、広報部といえばテレビに出たりイベントを企画したりと表舞台に立つ機会も多いため、花形部署の一つでしたが、今や左遷部署で誰も行きたがりません。中には『広報へ異動なら会社辞めます』という人もいるくらいです。広報の仕事のひとつにはSNS運用がありますが、このご時世どんな些細なことであっても炎上するリスクがあります。もし炎上を起こしてしまえば会社に居づらくなって自主退職するしかないでしょうね。部署内の担当者は誰もリスクを背負いたくないため、雰囲気はギスギスして最悪です」
男性が働く会社では、広報部の苦労は他にもあるという。
「広報の仕事は労力ばかりかかって実りが少ないものばかりです。たとえば社内報を作る仕事も、社内向けに作ったところで誰も読まないのでモチベーションが上がらないし、社長や役員を取材して記事を書いても何十回も文章を修正されるし、一体自分は何のために仕事をしているのか…。マスコミ関係者にプレスリリースを一斉メールで送ってもリアクションはほぼゼロ。休日にはビジネス系の雑誌やテレビに目を通して媒体研究をしっかりしないといけない。あとはマスコミとのやりとりも気を遣います。結局、どういう内容で報道するか、そもそも報道するかしないかは媒体側が決めることなので、力関係でいえば完全にこちらが下。以前、同じ部署にいた先輩は、マスコミに対して横柄な態度をとりすぎて、結果的にうちの会社がネガティブな方向で報道されてしまい、子会社に出向となりました」
かつての花形部署が再び脚光を浴びる日はくるのだろうか。
(橋爪けいすけ)