中国・武漢で最初の感染者が確認されて、間もなく1年を迎えようとしている新型コロナウイルス。感染者数は11月15日時点で5336万人、死者は130万人を突破(※米ジョンズ・ホプキンス大学調べ)。ここに来て感染が再び拡大しており、収束の気配すら見えない状況だ。
地球上のほとんどの国と地域で感染が確認されているが、なかにはいまだ「感染者数0人」という“奇跡の楽園”のような国が存在する。
その国とは、ミクロネシア連邦、キリバス、ナウル、パラオ、サモア、トンガ、ツヴァル、バヌアツの8カ国。名前を聞いてピンと来た人もいるかもしれないが、いずれも南太平洋に浮かぶ小さな島国。また、同じ地域にあるソロモン諸島は10月初旬、マーシャル諸島も10月下旬までそれぞれ感染ゼロの状態が続いていた。
小国ばかりで住民が少ないとはいえ、人口に占める感染者の割合も南太平洋地域は世界でもダントツの低さ。その理由はどこにあるのか?
「陸路での移動が不可能な島国のうえ、空港や港の数も限られています。ハワイなどと違ってリゾートでも訪れる観光客も以前からそれほど多くありませんでした。そのため、外からウイルスを持ち込まれるリスクが他の国に比べて少なかったわけです」
そう説明するのは、感染症に詳しい内科医。特に南太平洋の国々が属するオセアニア地域では、多くの国や地域が3月中から出入国を厳しく制限。バヌアツではいまだに国内の空港・港を閉鎖しており、サモアやトンガは航空機の運航が今もストップしたまま。条件付きで入国可能なところも諸外国の中ではかなり厳しい規制を設けている。
「ただし、たった1人でも感染者が出れば、そこからアッという間に感染が広がってしまうのがコロナの怖いところ。日本でも沖縄の石垣島、北海道の利尻島といった離島で実際にクラスターが発生しています。小さな島国であれば病院も不足しており、コロナ治療の体制も不十分です。今後もしばらくは鎖国同然の状態を続けるしかないでしょうね」
ダイビングスポットや穴場のリゾートとしても人気の南太平洋の島々。バカンスに行けるのは当分先のことになりそうだ。
(高島昌俊)