2019年9月12日にZホールディングス傘下に入って約1年、言い換えれば創業者である前澤友作氏(写真)が去ってから1年……。ZOZOが中間決算で過去最高益を達成したことが明らかとなった。一時は“ZOZO離れ”といわれるアパレルブランドの撤退が相次ぎ“オワコン”とまで言われたが、V字回復を遂げた理由はどこにあったのだろうか。
「ZOZOが10月29日に発表した2021年3月期中間決算では、売上高は約665億円で前年同期比16.2%増、営業利益は約199億円で同50.2%増、純利益は139億円で同76.1%増と大幅な増収増益となっています」(経済誌記者)
ただ、ZOZOは新しいサービスが話題を呼んだわけでも爆発的なヒット商品が誕生したわけでもない。それにもかかわらず、これだけの収益を上げたのには2つの理由がある。まず1つは前澤氏の“負の遺産”をZホールディングス入りするまでに整理できたことだ。125億の巨額赤字を生んだとされるプライベートブランドは大幅に規模を縮小し、出店ブランドの“ZOZO離れ”の原因ともいわれた会員制割引サービス「ZOZOARIGATO」は昨年の5月30日をもって終了している。
そしてもう1つは、新型コロナウイルスによってデジタルシフトが急速に進み、新規利用客が急増したことだろう。これまで試着もせずにネット上で服を買うのはもってのほかと敬遠していた人たちが、緊急事態宣言の発令によって試しに買ってみようとZOZOTOWNを利用し始めたという。これにより、撤退していたアパレルブランドの多くが復帰し、ZOZO離れの急先鋒と言われたオンワードも今年8月に再出店を果たした。
「ただし、単に失敗したサービスの損失が決算に乗らなくなり、コロナ特需があっただけと言えなくもありません。新規の利用者は確かに増えたものの、ZOZOTOWNを頻繁に利用するアクティブ会員の購入単価は右肩下がりに減り続けているのです。デジタルシフトが進んだとはいえ、このコロナ特需がいつまで続くかは不透明なところがありますし、このまま好調な状態が続くかと言われれば簡単ではないでしょうね」(ファッションライター)
カリスマだった前澤氏なきZOZOは、新たなヒットサービスを生み出せるか。
(小林洋三)