地域共通クーポンが紙クズに…高齢者は使えない「GoToキャンペーン」の不公平感

 今年7月22日から始まったGoToトラベル。当初は東京在住者や東京への旅行が対象外で開始1カ月の利用者数は420万人と低調だったが、9月末時点では2518万人と一気に増加。東京が解禁となった10月以降の状況はまだ発表されていないが、行楽地には賑わいが戻りつつあり、今まで以上のペースで増えていることは間違いないだろう。

 それだけ1泊1万4000円を上限とする旅行代金の割引、最大6000円分がもらえる地域共通クーポンが魅力的ということが言えるが、

年配の利用者からは「クーポンの使い方がよくわからない」といった苦情も耳にする。

 実際、10月に夫婦で1泊の温泉旅行に出かけたという70代の男性は、「発行されたのが電子クーポンだったため、利用方法がわからず使うのを諦めた」と残念そうに話す。

 旅行会社の窓口、または宿泊施設に直接申し込んだ場合は紙クーポンの発行でこれなら問題なく使えると思うが、各旅行サイトなどインターネット経由の場合は一部を除いてほとんどが電子クーポンとなる。男性は自身に代わって手配してくれた息子が旅行サイトで予約していたため、クーポンが“紙クズ”同然となる悲劇が生まれてしまったようだ。

 筆者もプライベートの旅行で電子クーポンを利用してみたが、専用の電子クーポン受け取りサイトにアクセスし、旅行会社のID、自身の予約番号、初日宿泊する都道府県の入力が必要で少し面倒だ。普段スマホを通話とメールでしか使わない高齢者にはちょっと高いハードルだと言わざるを得ない。

 電子クーポンは自分でチェックイン後にスマホで受け取り手続きを行うため、宿泊施設側は関与していない。そのため、宿によっては、フロントスタッフもやり方を把握していないのか、「尋ねても教えてもらえなかった」という声も少なくない。

 一方、ランチの時間帯の予約は500円、ディナータイムなら1000円分のポイントが付与されるGoToイートも対象はネット予約のみ。それも予約サイトに会員登録する必要があり、こちらも年配の方が使いこなすのは難しい。

 高齢者人口の多さを考えれば、需要喚起という点でもシニア世代をないがしろにするのは問題ではないだろうか。すでに運用が始まっている以上、システムを大きく変えるのは難しいと思うが、あらゆる世代の人が公平に利用できるよう、もう少し改善を加えてもらいたいものだ。

(高島昌俊)

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