東宝の“悪夢”を断ち切った!? 株価を押し上げる「鬼滅の刃」の“全集中上映”

 東宝の株価上昇が止まらない。コロナ禍が本格化した3月には3000円近くまで落ち込んでいたが、6月にはいったん4000円まで回復。ところが8月にはまた3000円近くに落ち込んだ“悪夢”のような株価は、その後は順調な右肩上がりのチャートを描き、10月20日の終値で4500円台。一時は年初来高値を更新する動きも見せた。

 コロナが落ち着いて回復? もちろんそれもあるが、最大の理由は今大ヒットのあれ。そう、「鬼滅の刃」効果だ。言うまでもなく東宝は配給元だ。

「『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が10月16日の金曜日に封切られると、金土日の週末3日間で早くも興行収入46億円を突破。新海誠監督の『君の名は。』が公開2日間で7億7000万円、『天気の子』が3日間で16億4000万円だったので、いかに“鬼スタート”だったかもわかるでしょう」(エンタメライター)

 成功は既に予想済みで、13日に発表された東宝の2021年度2月期決算では50億円だった連結純利益予想が強気の90億円に上方修正されていた。

 そこで未だ天井を知らない株価上昇の祭りを受けて、ネットでは東宝の力の入れ方が話題になっている。

 例えば新宿のTOHOシネマズでは複数あるスクリーンのいくつもが鬼滅の上映に割かれ、1日42回、時には5分おきに上映されるタイムスケジュールが、

「まるで無限列車のような全集中上映」

 と形容され、この3日間は密を避けて1席ごとの販売だったものを全席開放したことや、鬼滅のワンシーンが描かれてまるで映画のポスターのような同社の決算説明資料から、

「東宝の本気度が窺える」

 と言われているのだ。

 確かに資料の表紙には「その刃で、悪夢を断ち切れ」とあり、まさにコロナ禍で沈んだ観客減を断ち切りたい会社の願いが込められているとしか思えない。

(猫間滋)

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