本州最北端の“新幹線秘境駅”に行ってみた!乗客数最下位の駅が作られたワケ

 新幹線停車駅なのに秘境駅。ワード的には相反するイメージがあるが、実際にそんな駅が本州最北端に存在する。北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅だ。

 駅のある津軽半島北部は過疎地帯で、地元の青森県今別町の人口は約2500人。新幹線も通過する列車が多く、停車するのは上下線とも1日各7本しかない(※20年10月現在)。

 利用者は新幹線が停まる駅とは思えないほど少なく、国土交通省の「駅別乗降客数データ」によると平成30年度の1日あたりの平均乗客数はわずか28人(※乗車のみ。降車は含まれていない)。現在、日本全国に新幹線停車駅は107駅あるが文句なしの最下位だ。

 今回、そんな奥津軽いまべつ駅を訪問したが、下車したのは筆者を含めてたった3人。改札口は1つで自動改札機は2台しかなく、駅構内には売店や飲食店が1軒たりともない。利用客がここまで少ないと商売が成立しないのは容易に想像つくが、なんともさびしい限りだ。

 駅員以外には数名の清掃のスタッフを見かける程度で人の気配は皆無。駅自体は新幹線駅らしく立派で駅前ロータリーもきちんと整備されているがタクシーは一台も待機しておらず、30分後と1時間後に確認しても0台のまま。駅なのに呼ばなければ来ないようだ。

 駅発着のバス路線は複数あったが、1日の本数が3〜6本。土日祝は0本という路線もあった。また、ほぼ隣接する形でJR三厩線の津軽二股駅という別の駅もあるが、こちらは平日の上下線はいずれも1日5本と新幹線よりも少ない。

 駅前にはコンビニなどの商店、飲食店どころか建物すらなく、唯一あるのは津軽二股駅横の道の駅いまべつだけ。あとは少し離れた場所に数軒の民家を見かけるくらいだ。

 そもそもなぜこんな辺鄙な場所に駅を置いたのか。それは青函トンネル本州側入口のすぐ手前という立地が大きく関係している。トンネル内を含む保線作業の基地を用意しなければならず、単なる鉄道駅としてではなく保線基地としての役割が大きいようだ。

 訪れる観光客は決して多くないが、津軽半島は竜飛岬や青函トンネル記念館、冬場のストーブ列車で有名な津軽鉄道など見どころは意外と充実している。いっそのこと奥津軽いまべつ駅も新幹線秘境駅としてアピールすれば、観光客の利用がもう少し増えそうな気もするが……。

(高島昌俊)

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