世界の福本豊〈プロ野球“足攻爆談!”〉「阪神のコロナ騒動は言い訳無用」

 盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!

 阪神で新型コロナウイルスの集団感染が発生してしまった。2軍で浜地の感染が判明し、1、2軍の首脳陣、選手、スタッフの全員を検査したところ、9月25日にゴソッと出てきた。糸原、陽川、岩貞、馬場の1軍選手4人に球団スタッフ2人が陽性。翌日以降も連日、スタッフの感染が発表された。福留らは陰性判定やったけど、球団が濃厚接触者として判断、一挙に10人の登録を抹消するまでに。

 誰がかかってもおかしくない病気なだけに、感染自体はしかたない。ただ、今回の阪神の場合は感染経路に問題があった。名古屋で福留らが店を貸し切ったとはいえ、4人までという会食ルールを破り、8人で食事をしたところ、糸原、陽川、岩貞、スタッフがコロナに感染した。その日は月に1回定められた外出許可日だったというものの、この時期に大人数での食事は言い訳できない。阪神は3月下旬にも藤浪らが大人数での会食でコロナに感染した騒動がある。12球団でいちばん気をつけなアカン球団やった。

 当日の9月25日のヤクルト戦(神宮)、僕はたまたま現地でラジオの解説を行った。昨年までなら試合が終わったら、アナウンサーらと食事に出かけていたけど、今年はそういうわけにいかない。ホテルに帰る前にコンビニで弁当とビールを買って、部屋に戻るだけ。出張の楽しみなどまるでない。当たり前やけど、新幹線の移動でもマスクはきっちり着けている。忘れたらアカンと思って、カバンにはいつも予備も入れている。それに除菌スプレーも。窮屈な生活が続くけど、我慢するしかない。自分だけのことならいいけど、コロナに感染したら、仕事仲間にまで迷惑がかかってしまうんやから。

 話はそれるけど、僕らの現役の頃の阪神の選手は大人数で出歩くことが少なかった。タニマチに主力一人、それに若手が一人か二人くっついて行く感じやった。大人数で行くのは僕ら阪急のほう。タニマチはおらんけど、若手を大勢引き連れて、おいしいものを食べたり、うまい酒を飲みに行った。遊びに連れて行ってもらった選手は翌日の試合でミスすると、自分のチームのベンチからさんざんヤジられた。「遊んだ次の日こそ活躍しろ」というのが鉄則やったから。そういうことを思い出すと、コロナ禍のシーズンは、選手もストレスがたまるやろうな。

 でも、ここは各自が我慢するしかない。シーズンも残り1カ月半。感染者が増えて打ち切り、なんてことにならず、最後までやりきってほしい。プロ野球がなくなると、ますます楽しみがなくなってしまう。

 それと阪神。ゲーム差を考えると、もう巨人との差を逆転する可能性は絶望的となった。幸いにも大山や近本は今回のコロナ騒動に巻き込まれていないから、何が何でもタイトルを狙わないといけない。大山も右打ちのチームバッティングなんかファンは望んでいない。期待に応えるのもプロというもの。

 大山は構え遅れる傾向があり、速いストレートに差し込まれることが多い。タイミング的には全部左翼席へ放り込むぐらいでいい。それと完璧に捉えた打球が左翼ポール際の惜しいファウルになることが多いのももったいない。それは、左肘がスイングで下を向いたまま我慢できず浮いてしまうから。キング奪取には、外食も肘の向きも我慢が必要やで。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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