《性行為の最中に避妊道具をこっそり外した疑いで検察が捜査に乗り出した》
そんなセンセーショナルなニュースが報じられ、世界中に激震が走っている。
9月末にAFP通信が報じたところによれば、フランスの男性外交官(44)が、マッチングサイトで知り合った女性と合意のもとで性行為を行った。女性は事前に男性外交官に避妊道具の着用を求めたが、男性は行為中に避妊用のゴムを外す「ステルシング」を行なった疑いがもたれているのだ。
このニュースを受け、日本のネット上では「なんて卑劣な行為だ。妊娠だけじゃなく性病感染のリスクもあるっていうのに」「日本でもステルシングされて泣き寝入りしている女性は多いのだろう」「性行為中に意図的にゴムを外したのか、不可抗力で外れたのかは立証が難しい案件だ」などの声があがっている。
いわゆる“ナマ”でしたがる男性はどこの国にもいるが、その理由は「快楽だけが目的ではない」と臨床心理学者は解説する。
「まず大前提として、“自分の種をまく”という行為は多くの男性が抱いている生物学的な欲求です。この欲求は、戦争や疾病など、未曽有の危機に直面した際に高まる傾向が強いと言われ、コロナ禍との関連性はゼロではないでしょう。歴史を振り返ると、多くの男性権力者たちが自分の子孫を残すために何人もの子どもをつくってきました。モンゴル帝国のチンギス・ハンの直系の子孫は世界中に約1600万人もいるという研究結果も出ています。その一方で、中には自分のアイデンティティや権力を残したいといった願望、あるいは自分の遺伝子が優れているという優生学や人種差別的思想から、自分の種を植えつけようとするタイプもいます。たとえば近年、アメリカでは不妊治療の専門医師が女性患者たちに対して、長年にわたりドナーではなく自分の生殖細胞を使って無断で受精させていたという事件も明らかになりました」
ステルシングが行われる理由は他にもある。
「一部の男性は、スリルを味わいたいという性衝動からステルシングを行います。彼らが快楽を感じるのは、性行為そのものよりも“女性の同意がないことを行っている”という事実。そうした男性の多くは、共感性、社会性、責任感、道徳観などが著しく欠落しており、自己愛が強い傾向にあります。この手のタイプは、ターゲットになる女性を常に探していて、目星をつければ言葉巧みに囲い込む。自分の安全を守る能力にも長けているため、あとで言い訳がつくよう、用意周到にステルシングを行います。そのため、第三者には気づかれにくく、ターゲットの女性も被害を自覚しないまま、性的搾取を繰り返されてしまうことも少なくありません」(前出・臨床心理学者)
性犯罪はもとより、「同意なき性行為」が根絶されることを願ってやまない。
(橋爪けいすけ)