麻生太郎財務相は4月9日、一万円札などの紙幣が20年ぶりに刷新されると発表した。これを受けて翌10日の情報番組では24年上期から発行される新紙幣について特集。なかでも新一万円札の肖像画に採用された渋沢栄一について、「日本資本主義の父」と称されながら一般的な知名度が高いとは言いがたいことから、長い時間を割いて解説していた。
ところがその紹介の中で「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)が、痛恨のミスを犯していたというのである。鉄道事情に詳しいライターがその場面について指摘する。
「同番組では渋沢が設立した数々の企業や大学について紹介。MCの羽鳥慎一は『街まで作っちゃった』と、東京の高級住宅地である田園調布を開発したことも説明していました。その中心にある田園調布駅には東急電鉄の東横線と目黒線が乗り入れており、東急電鉄にとっては象徴的な存在。もちろん東急電鉄の設立にも渋沢が関わっているわけですが、番組が用意したパネルにはなぜか東急電鉄の社名がなく、代わりに阪急電鉄と書かれていたのです」
渋沢は1918年、理想的な住宅地である「田園都市」の開発を目的に田園都市株式会社を設立。そのアクセス鉄道として整備されたのが目蒲線(現在の目黒線と多摩川線)であり、同線を運営する目黒蒲田電鉄が東急電鉄の源流となっている。
そういった経緯から、東急沿線ではもともと渋沢の知名度は高く、新一万円札の肖像画に採用されたことに対する喜びも大きい。それゆえに、「モーニングショー」が東急電鉄を阪急電鉄と書き間違えたのには、東急沿線住民もカンカンだというのだ。
「渋沢は阪急電鉄に関わっていないものの、目蒲線の運営を鉄道の専門家に任せようと考えた際に、当初は阪急電鉄の創始者である小林一三に声を掛けたという話も伝わっています。それが間違いの原因だった可能性もありますが、そうだとしても番組の制作スタッフが誰も<阪急電鉄>という社名を見て『あれ?』と思わなかったのか、はなはだ疑問ですね」(前出・鉄道ライター)
ちなみにテレビ朝日の最寄り駅は東京メトロ日比谷線の六本木駅で、日比谷線は東急東横線に乗り入れている。それでも「モーニングショー」の制作陣に東急の沿線住民はいなかったのだろうか?