阪神・藤川球児が引退を表明した。日米通算250セーブまで「あと5」と迫っており、昨年オフも「優勝しそうな雰囲気が…」とチームの上昇ムードを誇らしげに語っていた。
気力、体力ともに充実していると捉えていたメディアも多かっただけに、今回の突然の引退表明に驚いた関係者も多かった。
「昨年オフ、気力にも溢れた藤川の言葉とは裏腹に、引退の相談をしていたようです。球団が必死に引き止めたそうですが…」(プロ野球解説者)
藤川の体は“ボロボロ”だったようだ。しかし、シーズン中、それも120試合のほぼ半分を折り返した時点での引退表明にはワケがありそうだ。
「どの球団も経理のプロや専門家の意見などを交えて、新型コロナウイルス禍による今季の損失を計算しています。前年までのペナントレースより23試合も減り、序盤戦は無観客試合、7月10日から観客を迎えることが許されたものの、『上限5000人』の規制解除についても再延期が決まりました。詳細な数字はわかりませんが、どの球団も60億円強の損失は免れないとの声もあります」(球界関係者)
観客数の話をすれば、昨季の阪神は309万1335人を動員し、12球団トップに君臨した。1試合平均4万2935人。「上限5000人」の規制が解除されない以上、阪神は1試合あたり約3万8000人分の入場料やその他グッズや飲食といった物販収入を喪失していく計算だ。
上限5000人の解除が再び検討されるのは9月末と言われる。この頃になれば、ペナントレースの行方もハッキリしている。原巨人の独走を止められなかった場合、スタンドを満員にしたとしても、阪神ファンは消化試合を見せられることになる。
穿った見方かもしれないが、藤川の最後の雄姿、日米通算250セーブの記録はたとえ優勝できなかったとしても、虎ファンの心を奮い起こすに違いない。記念グッズも球団に大きな利益をもたらすだろう。
「藤川は体のケアにも十分に気を遣ってきました。球団が慰留しても、チームに迷惑を掛けると思えば身を引くタイプです。9月1日の引退会見では『一年間、体の準備が整わなければプロとして失格』と語っていましたが、少なくとも、昨年オフの時点では『まだ投げられる』と思っていたはずです」(前出・球界関係者)
コロナによる“活動休止期間”が、調整を狂わせたとの見方もある。いったん“オフ”に切り替わった体を元に戻すのは難しく、さらに序盤戦の不振が気力を削いでいったとも考えられる。
藤川は感染こそしていないが、コロナ禍の犠牲者の一人と言えそうだ。
(スポーツライター・飯山満)