新型コロナウイルスによる「外出自粛」「ステイホーム」といった行動習慣によって、家族と向き合う時間が増えたという人は多いかもしれない。一方で、個々の家庭がはらむ問題をも浮き彫りにすることとなった。
コロナ騒動を契機にパパ活を始めたという、「毒親」に悩む18歳の少女に話を聞いた。現在は埼玉県の実家暮らしだという織江さん(仮名)、18歳。
「父親は開業医で、母親は専業主婦。一人っ子。いわゆる毒親だと私は思ってるんですけれど、説明は難しいですね。殴られたりといった直接的な暴力があるわけじゃないから。何て言うか、こういうのが正しい人生、娘が送るべき人生…っていうのが完全に決まってたんですよね、小さい頃から。医者になれとかはなかったです。多分、女だったから。許される選択肢がものすごく少ないくせに、『自分の未来は自分で選択して努力で切りひらけ』みたいなこと言うんですよ。中学のときに、一度、『保母さんになりたい』って言ったことがあったんですけど、かなりキツめに否定されましたね。それも『向いてない』みたいな言い方で。でも子供でもわかるんですよね。本音は単に、保育士の平均年収が高くないからだってことが。ものすごい下に見てるんですよ」
そんな織江さんは、小さい頃から、両親から押し付けられるような形で多くの習い事を経験してきた。小学生になると公文教室、高学年からは塾と個人指導を掛け持ち。さらに、ピアノ、バイオリン、英会話と詰め込まれ、遊ぶ暇などまったくなかったという。
「親たちの希望なのに、まるで私の希望であるかのように誘導していくんです。やめたいって言えば『あなたがやりたいって言ったんだから、責任を持ちなさい』でしょ。なんで子供の言葉にそこまで責任が発生するんだよって。それで『これだけお金と手間をかけて、土台を整えたんだから、価値のある未来に進め』みたいなプレッシャーをかけられ続けて…」
高校を卒業して、推薦入学が決まっていた都内の女子大に進学した織江さん。現在は大学の授業もオンラインで行われており、思い描いていたキャンパスライフは送れていないが、そうした閉塞感が“一大決心”へと駆り立てた。
「なんか気づいちゃったんですよね…コロナで社会全体がアタフタしてるのを見て。状況がちょっと変わるだけで、生きていくために必要なものも180度変わるんだな…みたいな。同時に『このまま親に与えられた状況の中で生きてたら、私、ヤバイ』ってことにも気づいちゃって。でも、そこから抜け出るのって、ちょっとやそっとじゃ無理なんですよ。悩んだ結果、行き着いたのが、知り合いに教えてもらったパパ活でした。男性とは“未経験”じゃなかったですよ。高校時代に親に内緒で少しの間だけつき合った相手いましたから。怖かったので、パパ活の相手の身分も確認してくれるパパ活サイトを利用しています。親には家庭教師のバイトって嘘をついて、普通のホテルとかで会ってます。定期で会ってくれる“固定客”がつくと、意外とスムーズだなって。今はお金を貯めて一人暮らしを始めるのが目標。精神的にも経済的にも、一刻も早く毒親から独立したい一心です」
このコロナ不況で、かつては学生にとって定番のバイト先だった飲食業界も、今は新規採用どころではないかもしれないが…。「毒親」からの自立の手段が、親と同世代の男性を相手にしたパパ活とは、皮肉としか言いようがない。
(オフィスキング)