「10対90」の“AI評価”を跳ね返す!藤井聡太「二冠達成」までの新局面

 ハードスケジュールの合間を縫っての棋聖戦で初戴冠を成し遂げた藤井聡太七段(18)。だが、休む間もなく「二冠達成」に向けた「第61期王位戦」の第3局が8月4日から兵庫県神戸市で行われる。7月13・14両日の第2局では、短い時間で「問題点をチューニングする」という藤井の「AI超え」がいかんなく発揮された対局だった。相手は木村一基王位(47)。「千駄ヶ谷の受け師」として粘り強い将棋に定評があり、藤井の規格外の奇手をどうしのぐかに注目が集まっていた。ところが‥‥。

「先手の木村王位がエース戦法の『相掛かり』で口火を切って優位な展開に持ち込みました。中盤には妙手も飛び出してAIの数値も一時的に90:10と表示されるほど差が広がります。後手の藤井は防戦一方でしたが、辛抱強く守り続けるうちに、木村王位に手の緩みが出てきました。それをキッカケにして形勢が丸ごと逆転する流れになりました」(将棋ウオッチャー)

 AIでどんなに有利な判定が出ていようが、ひとつの指し手によって、形勢が覆るのが将棋の恐ろしさ。トップクラスの対局を目の当たりにして、ダイナミックな展開にアゼンとしたファンも少なくなかったようだ。

 そして、お互いに持ち時間を使い切った終盤には1分将棋に突入。早指しは詰め将棋に定評のある藤井の得意分野だ。

 藤井七段に次ぐ最年少タイトル獲得の記録保持者(18歳6カ月)である屋敷伸之九段が解説する。

「1分将棋では攻守の判断を直感に頼る比重が大きくなる傾向にあります。それでも、正解を指し続けるのがプロ棋士ですが、全てを読み切るのは至難の業。苦しい展開でしたが、最後は藤井七段に軍配が上がりました」

 現在、藤井が7番勝負中2勝して優位に立つ状況だが、7度の挑戦の末に史上最年長でタイトルを獲得した苦労人が、そうやすやすと王位を明け渡すわけにはいかない。

「昨年も豊島将之王位(当時)に2連敗したあとに逆転して初のタイトル獲得につなげました。木村王位も意地を見せてくれるはずです」(屋敷九段)

 棋聖戦と同時進行で進んだタイトル戦は、火花散る新局面を迎えそうだ。

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