最近、我々の生活の中にも徐々に取り入れられているAI(人工知能)。2022年11月に公開されたオープンAIの「チャットGPT」はあまりに有名だが、それ以前からもなじみ深いところでは「グーグル翻訳」やiphoneなどのアップル製品に搭載されているバーチャルアシスタント機能の「Siri」、他にもお掃除ロボットをはじめとするAI家電など導入例は数多い。
それは会社での仕事にも言えることで、人間に代わり一部の業務をこなし、その範囲を徐々に増やしつつある。こうしたAIによる業務の合理化は、企業にとっては人件費の削減という大きなメリットがあるが、労働者にとっては雇用機会の喪失に直結しかねない。
実際、22年末から米国ではグーグルやアマゾン、マイクロソフト、メタなどの大手IT企業が1万人規模以上のリストラを行い、その流れは同業界にとどまらない。昨年、米投資銀行大手のゴールドマン・サックスは「米国全体の仕事の25%がAIに代替される」とのレポートを発表し、3月末には英シンクタンク「公共政策研究所」が報告書の中で「AIの発展で今後5年以内に英国内で最大800万人分の雇用が失われる可能性がある」と指摘している。
「どの業界もAIなしでは仕事が成り立たない状況となり、現在はまさに過渡期。当然、日本にもその波が及んでおり、東京商工リサーチが発表した情報によると上場企業の早期・希望退職者の募集人数は2月末の時点ですでに昨年を上回っています」(経済誌記者)
ただし、募集41社中でもっとも多いのは情報通信の11社。次いで電気機器とアパレル関連、医薬品が5社ずつで、サービス業が3社、機械、輸送用機器が各2社と続いている。
「一方、以前から深刻な運転手不足に陥っている運送会社やバス会社、インバウンド復活でコロナ禍からV字回復を遂げた観光業は1社もありません。ただ、雇用市場全体を見た場合、ホワイトカラーと違って現場系のブルーカラーの仕事はAI化の影響が比較的少ないため、こちらの職種に流れてくる労働者の増加が予想されます」(同)
デスクワークの人が転職を希望する場合、その多くが同じ業務を求める傾向にあるが、もはやそれは高望みとなりつつあるようだ。