米プロアメフトNFLの名門チームであるワシントン・レッドスキンズが7月13日、80年以上にわたって名乗り続けてきたチーム名を今後、使用しないと発表した。同時にネイティブアメリカンの横顔をかたどったロゴの使用も取りやめるという。
レッドスキンズというチーム名は、白人がネイティブアメリカンを“赤い肌”と呼び表したことに由来しており、アメリカでは以前から「民族への侮蔑」との批判も少なくなかった。そして今月に入り、本拠地のフェデックスフィールドに社名を冠する物流大手のフェデックスやスポーツ用品大手のナイキといった企業がチーム名の維持に反対を表明。これまでチーム名変更を拒んでいたオーナー側も態度を変えざるを得なくなり、今回の発表に至ったものだ。
「アメリカではBLM(ブラックライブズマター)運動に伴い、あらゆる人種や民族などに対する侮辱的な表現や名称への抗議活動が活発化。なかでもレッドスキンズのチーム名には以前から抗議の声があがっていたこともあり、今回の変更に至りました。同様にMLBのクリーブランド・インディアンズでもチーム名変更が取りざたされることに。西海岸の名門スタンフォード大学では1972年に“インディアンズ”のチーム名を廃しており、そこから48年かけてプロスポーツ界にも改名の動きが波及した形です」(スポーツライター)
アメリカでは国中を揺るがす大ニュースとなっている今回の改名劇だが、日本では太平洋の向こう側の話としてピンとこない人も少なくないようだ。それではこの動きを日本に当てはめた場合、どんなことが起こるのだろうか。
「日本では特定の人種や民族をチーム名に取り上げているケースはほとんどないと思われますが、その逆に“特権階級”を採用するケースはあります。その典型がプロ野球の日本代表チームである『侍ジャパン』でしょう。侍(武士)は江戸時代の支配階級であり、人口にして6%程度の武士が実権を一手に握り、農民や町人といった平民を支配する構造が続いていました。そのため理屈から言えば、『支配階級である「侍」をチームの象徴にするのはおかしい!』という主張もあり得るというわけです」(前出・スポーツライター)
現状として侍ジャパンの名称に不満を唱える国民はほとんどいなそうだが、一部には「農民ジャパンのほうが実情に合っている」といった声もあるという。果たしてアメリカを揺るがすムーブメントが日本に波及することはあるのだろうか。
(北野大知)