原巨人と石井GMの率いる楽天イーグルスの間で、今季2件目となる交換トレードが成立したと発表されたのは7月14日。楽天の左のサイドスロー・高梨雄平と巨人の若手ホープ・髙田萌生の両投手だ。
両球団は6月25日に左腕・池田駿と右の大砲・ウィーラーの交換トレードも成立させている。約3週間で2度も同一球団同士でトレードを行ったのもビックリだが、今回、両球団を知る関係者から聞こえてくるのは「よく出したものだ」という声。高梨は侍ジャパンにも招集された貴重な中継ぎ左腕であり、髙田は「将来のエース候補」と目されてきた。巨人側の呼びかけで行われたという交換トレードだが、興味深いのは、交渉の過程で出たとされる石井GMの発言だ。
「髙田選手だったら、という条件で成立したトレードでした」
巨人はクローザーのデラロサを欠き、リリーフ投手の補強を急務としていた。つまり、今シーズンのための即戦力を得るためのトレードだ。それに対し、石井GMはプロ4年目、未勝利の若手を一本釣りした。こちらは中・長期ビジョンに立っての補強だ。
「松井裕樹の先発転向も、このトレードには絡んでいます。石井GMは則本、岸、涌井らの先発陣に自信を持っていますが、3年後、20代の大黒柱になるピッチャーがいないと見ていました。松井の先発転向が伝えられた当初、『ダメなら従来通り、リリーフに戻す』と見られていましたが、実際は違いました。先発で結果が出ないため、二軍で鍛え直しています。3年後を見据えた配置換えであり、松井に次ぐ20代の先発が欲しいと思い、髙田を交換要員に挙げたのでしょう」(球界関係者)
石井GMはスポーツ紙のオンライン取材に応じ、巨人とのトレードが続いたことについて、「お互いにウィンウィンになる関係であればいいんじゃないかなと思う」と答え、高梨にもエールを送っていた。
「巨人に入団した高梨ですが、一軍に定着した重信慎之介は早大の1年後輩にあたり、すぐに馴染めると思います。しかし、高梨はワンポイント要員ながら、ソフトバンク・柳田、西武・森、オリックス・吉田尚といった左のスラッガーに対して圧倒的な強さを誇ってきました。楽天からすれば、ペナントを戦ううえでマイナス面も大きいのではないでしょうか」(スポーツ紙記者)
今季のトレード期日は9月末日。交渉はウェルカムというだけに、石井GMはいつでも交渉のテーブルにつく予定だ。
(スポーツライター・飯山満)